丹波国分寺

丹波国分寺

丹波国分寺は、京都府亀岡市千歳町国分に位置する浄土宗の寺院で、護国山と号します。本尊は薬師如来です。奈良時代に聖武天皇の詔により日本各地に建立された国分寺の一つ、丹波国国分僧寺の後継寺院にあたります。この記事では、現在の丹波国分寺とともに、古代寺院跡である丹波国分寺跡（国の史跡）と丹波国分尼寺跡（史跡指定なし）についても詳しく解説します。

歴史

丹波国分寺の創建時期は明確にはわかっていませんが、出土した瓦から、奈良時代末期に建立されたと考えられています。国分寺周辺は古代丹波国の中心地であり、現在でも丹波国一宮の出雲大神宮や千歳車塚古墳などの史跡が残っています。

『延喜式』には、丹波国の国分寺の維持費用として稲4万束が割り当てられたと記録されています。発掘調査により、平安時代末期頃に再建されたことが確認されており、その時期の薬師如来坐像が本尊として伝えられています。しかし、文献上ではその後の詳しい経緯は明らかではありません。

寺の伝承によると、戦国時代に明智光秀の兵火によって焼失したとされ、安永3年（1774年）に護勇比丘によって現在の本堂が再建されました。ただし、国分寺には元禄14年（1701年）の銘がある鰐口が残っているため、それ以前に復興されていたと考えられます。現在は、亀岡市の専念寺によって管理されています。

境内

現在の本堂、鐘楼、山門は安永3年（1774年）に建立されたもので、いずれも亀岡市指定文化財に指定されています。境内には、以下のような名木があります。

オハツキイチョウ（雌）: 胸高幹周4.3メートル、樹高22メートル（1996年1月調査時点）。乳イチョウとして知られ、亀岡市指定天然記念物、京都の自然200選、亀岡の自然100選に選定されています。
カゴノキ（雄）: 胸高幹周3.3メートル、樹高13メートル（1996年1月調査時点）。亀岡市指定天然記念物です。
ムクノキ: 胸高幹周6.36メートル、樹高25メートル（1996年1月調査時点）。亀岡市指定天然記念物です。
イヌマキ: 胸高幹周2.2メートル、樹高8メートル（1996年1月調査時点）です。

丹波国分寺跡

僧寺跡の寺域は2町四方（約218メートル四方）です。昭和57年（1982年）からの発掘調査により、金堂、塔（七重塔）、中門、僧房、鐘楼などの遺構や、鎮守社の八幡神社と見られる遺構が確認されています。伽藍配置は、西に金堂、東に塔を配した法起寺式です。これらの建物を囲むように回廊が設けられていました（ただし、回廊は南面のみで、他の3面は築地の可能性が指摘されています）。主な遺構は次の通りです。

金堂: 現在の境内南西、山門西側に位置します。創建当初は瓦積基壇、平安時代末期の再建時は乱石積基壇で、位置は重複しています。乱石積基壇は東西19.6メートル、南北15.4メートル、高さ約1.2メートルで、南面中央に幅9.5メートルの階段が4段あります。再建された建物の規模は、東西桁行15.8メートル、南北梁行11.6メートルで、桁行5間・梁行4間です。この再建建物は鎌倉時代後期に焼失したと考えられています。
塔（七重塔）: 現在の境内南東、山門東側に位置します。金堂と同様に、基壇は創建当初と平安時代末期の再建時のものが検出されています。基壇の規模は創建当初で15.6メートル四方、再建時で16.4メートル四方です。基壇上には、建物跡として出柄式の礎石が17個完存しています。初層の一辺は8.9メートル、中央間は3.1メートルで、脇間は2.9メートルです。
講堂: 現在の本堂と重複しています。瓦積基壇で、東西32.8メートル、南北20.9メートルです。建物は、東西桁行26.8メートル、南北梁行14.9メートルで、桁行7間・梁行4間です。
僧房: 現在の本堂北側で確認されています。瓦積基壇で、柱間は東西桁行が3.6メートル、南北梁行のうち北側3間が3.3メートル、南側1間が3メートルです。南側1間は通路部分と推定されています。

また、近くの愛宕神社（亀岡市千歳町国分）の境内社には八幡宮神社がありますが、これは天保6年（1835年）に国分寺の鎮守社を遷座したものとされています。さらに、亀岡市の蔵垣内遺跡では、子院と見られる遺構が見つかっています。

丹波国分尼寺跡

尼寺跡は、国分寺の西約450メートルの場所にある河原林町河原尻の御上人林廃寺跡に比定されています。僧寺とは古代の山陰道を挟んで位置し、寺域の南限は僧寺跡と同じ条里線上にあります。史跡整備はされておらず、現在は説明板のみが残されています。

寺域は1町半四方（約165メートル四方）で、伽藍は南大門、中門、金堂、講堂が南北一直線上に並ぶ東大寺式伽藍配置です。主な遺構は次の通りです。

金堂: 東西約27メートル、南北約18メートル。桁行5間・梁行4間と推定されています。
講堂: 東西25.8メートル、南北16.8メートル。桁行5間・梁行4間です。
南大門: 東西約15メートル、南北約10メートル。

この御上人林廃寺跡からは、国分寺跡と同じ文様の瓦や、奈良時代から平安時代にかけての土器が出土しています。

文化財

重要文化財（国指定）

木造薬師如来坐像: 平安時代後期の作で、1917年（大正6年）4月5日に指定されました。

国の史跡

丹波国分寺跡 附 八幡神社跡: 1928年（昭和3年）2月17日に指定され、2006年、2017年、2018年、2019年に史跡範囲の追加指定が行われました。

亀岡市指定文化財

有形文化財
国分寺本堂・山門・鐘楼: 1992年（平成4年）5月12日指定。
旧呉服町火の見の鐘: 1970年（昭和45年）3月31日指定。
天然記念物
国分寺境内地イチョウ: 1986年（昭和61年）3月31日指定。
丹波国分寺跡のカゴノキ: 2002年（平成14年）6月28日指定。
丹波国分寺跡のムクノキ: 2002年（平成14年）6月28日指定。

現地情報

所在地

国分寺: 京都府亀岡市千歳町国分桜久保25
国分尼寺跡: 京都府亀岡市河原林町河原尻

関連施設

亀岡市文化資料館: 丹波国分寺跡の出土品などを展示しています。

交通アクセス

バス: JR嵯峨野線亀岡駅または千代川駅から、亀岡市ふるさとバスで「国分」バス停下車、徒歩約5分
車: 京都縦貫自動車道 亀岡ICから約20分

脚注

参考文献

史跡説明板
亀岡市文化資料館常設展示テーマ解説書
『日本歴史地名大系 26 京都府の地名』平凡社、1981年。

関連文献

「丹波國分寺址」『京都府史蹟勝地調査會報告 第一冊』京都府、1919年。

外部リンク

丹波国分寺跡 - 亀岡市観光協会

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