久保田円次

久保田 円次

久保田 円次（くぼた えんじ、1903年8月23日 - 1998年2月1日）は、日本の政界において衆議院議員を長く務めた人物です。群馬県に生まれ、実業家として成功を収めた後に政治の世界へと足を踏み入れました。

経歴

1923年に栃木県立足利工業学校（現在の栃木県立足利工業高等学校）を卒業後、工兵少尉として軍務に就きました。実業界においては、久保田兄弟鉄工所を設立し副社長を務めたほか、光洋株式会社の社長として経営手腕を発揮しました。これらの経済活動での実績は、後の政界進出への重要な足がかりとなりました。

地方政治から国政へ

実業界での成功を経て、久保田氏はまず地方政治に進出します。伊勢崎市議会議員に当選し、さらには市議会議長を務めるなど、地方自治の場でリーダーシップを発揮しました。その後、群馬県議会議員としても活動し、地盤を固めていきました。

1960年に行われた第29回衆議院議員総選挙において、旧群馬1区から自由民主党の公認候補として立候補し、初当選を果たしました。以来、連続して8回の当選を重ね、国政の舞台で活躍しました。党内においては、当初は岸派に所属しましたが、後に同郷の先輩である福田赳夫が率いる福田派に移籍し、その一員として活動しました。

要職歴任

国会議員としてのキャリアの中で、久保田氏は複数の重要な役職を歴任しました。第1次佐藤内閣では北海道開発庁の政務次官に就任し、国の開発政策に携わりました。続いて第2次佐藤内閣では文部政務次官を務め、教育行政に関わりました。

また、自由民主党の老人対策特別委員長として高齢者福祉政策の推進に尽力したほか、群馬県猟友会の会長も務めました。衆議院においては、逓信委員長や文教委員長といった委員会の要職を歴任し、それぞれの分野で政策立案や審議に貢献しました。

防衛庁長官としての短命なキャリア

1979年11月9日、第2次大平内閣において、久保田氏は防衛庁長官に就任しました。しかし、防衛分野に関する専門性が十分でなかったためか、国会での質疑応答において、専門的な質問に対しては防衛局長に答弁を委ねる場面が度々見られ、これが一部で議論を呼びました（例：衆議院予算委員会昭和55年2月1日）。

在任期間はわずか3ヶ月ほどでした。1980年2月4日、在任中に発覚した宮永スパイ事件に関して、監督責任を問われる形となり、当時の陸上幕僚長であった永野茂門とともに引責辞任するに至りました。

政界からの引退と晩年

1983年の総選挙で落選したことを機に、久保田氏は政界からの引退を表明しました。久保田氏の地盤は、その後、無所属で出馬した尾身幸次氏によって継承されることとなりました。

政界引退後の1984年には、長年にわたる公職での功績が認められ、勲一等瑞宝章が授与されました。これは、実業家から政治家へと転身し、長きにわたり国の発展と地元群馬県の振興に尽くした功績を称えるものでした。

久保田円次氏は、1998年2月1日、老衰のため94歳でその生涯を閉じました。実業界での成功から地方政治、そして国政へと舞台を移し、激動の昭和から平成にかけて日本の政治を支えた一人として記憶されています。

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