久我通名

久我通名：波乱万丈の公卿の生涯

久我通名（こが みちな）は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した公卿です。内大臣・久我広通の庶長子として生まれ、順調に昇進を重ねましたが、予期せぬ事件によりその人生は大きく変わります。

若き日の栄光と転落

明暦3年（1657年）に従四位に叙爵し、公卿としての道を歩み始めます。元服後も累進を続け、侍従や左近衛中将、踏歌節会外弁などを歴任。寛文6年（1666年）には、わずか19歳で権中納言という उच्च位にまで上り詰めました。

しかし、寛文10年（1670年）4月、通名は男色を巡る事件で高倉兵部少輔を殺害してしまいます。これにより権中納言を罷免され、失意のうちに延宝元年（1673年）に出家し、療養生活を送ることになりました。

出家後の生活と子孫

通名の長男・豊忠は、父が権中納言を辞任する前年の寛文9年（1669年）に、同じ清華家の広幡家を継いでいました。そのため、久我家の家督は弟の通誠が継ぐことになります。出家後の元禄7年（1694年）には、次男・堀川広益を儲けました。広益は江戸へ下って幕府に仕え、高家旗本として取り立てられています。

興味深いことに、通名は病気を理由に辞職したにもかかわらず、77歳まで長生きしました。また、長男・豊忠の孫である信通が、後に久我家の家督を継いでいます。

出家の真相：病気か、それとも…

国立公文書館内閣文庫に所蔵されている『諸家譜』の多くの写本では、通名の出家理由を「依長病」（長い病気による）としています。しかし、『諸家譜』の文化年間に成立した史料には、出家の記事に朱色の注釈が加えられており、『九条家本知此』として、実際には延宝2年（1674年）4月17日に出家したこと、そして「有子細近年蟄居」（ある事情により近年蟄居した）と記されています。このことから、病気はあくまで表向きの理由であり、実際には何らかの事情があったと考えられています。

出家後も通名は子を儲けており、堀川広益の他に、牧野忠寿の正室となった厚姫も、婚礼が正徳6年（1716年）であることから、出家後の子であると推察されています。

久我通名の系譜

父：久我広通
母：家女房
正室：西園寺公満の娘
男子：広幡豊忠（1666-1737）
男子：堀川広益（1694-1756）
側室：松向殿（栄珠院）
女子：長松院（1689-1745） - 貞子、冬姫。伊達吉村正室
生母不詳の子女
女子：櫛笥隆兼室
女子：厚君（？-1732） - 牧野忠寿正室
女子：孝姫 - 通子。伊達村胤室
女子：堀川広益養女 - 高島広行室

まとめ

久我通名は、若くして उच्च位に上り詰めながらも、事件によってその地位を失い、出家を余儀なくされた人物です。出家の真相は謎に包まれていますが、その後の人生や子孫たちは、それぞれの道で歴史に名を刻んでいます。通名の生涯は、栄光と挫折、そして人間ドラマに満ちた、興味深い物語と言えるでしょう。

参考文献

済海寺遺跡調査団（団長鈴木公雄）「港区三田済海寺 長岡藩主牧野家墓所発掘調査報告書」（1986年・東京都港区教育委員会）
『系図纂要』
『寛政重修諸家譜』
『諸家伝』

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