久米田寺

久米田寺（くめだでら）は、大阪府岸和田市に位置する高野山真言宗の寺院で、準別格本山に指定されています。山号は龍臥山といい、本尊として釈迦如来を祀っています。この寺院は、行基によって開かれたと伝えられており、その歴史は古く、多くの文化財や史跡を抱える由緒ある場所です。

歴史

久米田寺の始まりは、奈良時代の天平10年（738年）にまで遡ります。行基が、灌漑用のため池である久米田池の維持管理のために創建したとされています。当時の寺域は非常に広大で、その規模は院号である「隆池院」の由来ともなっています。平安時代には、奈良興福寺一乗院の支配下に入りました。鎌倉時代には承久の乱により一時荒廃しましたが、鎌倉時代中期に安東蓮聖によって再興されました。南北朝時代には、天皇や皇族からの帰依も厚く、楠木正成との関係も深く、手厚い保護を受けました。しかし、戦乱により寺領が脅かされることも少なくありませんでした。室町時代には、足利尊氏・直義兄弟によって全国に設けられた安国寺の一つにも指定されています。

戦国時代には、久米田の戦いや高屋城の戦いの兵火によってほぼ焼失しましたが、江戸時代の延宝2年（1674年）に復興を遂げました。その後も宝暦年間、明和7年（1770年）に本堂が再建され、大正8年（1919年）には本堂の大修繕が行われるなど、幾度かの修理を経て現在に至ります。境内には現在、5つの塔頭があります。

春には桜の名所として知られ、多くの花見客で賑わいます。毎年4月21日には縁日が開かれ、「21日のおだいっさん」として地域住民に親しまれています。

境内

久米田寺の境内には、以下のような見どころがあります。

金堂（本堂）：明和7年（1770年）に再建された建物で、扁額「隆池院」は松平定信の筆によるものです。
多宝塔：2003年（平成15年）に再建された、美しい姿を見せる塔です。
四国八十八箇所石仏群：四国八十八箇所霊場を模した石仏群です。
聖天堂：嘉永7年（1854年）に建立されたお堂です。
開山堂（行基堂）：文政5年（1822年）に再建された、行基を祀るお堂です。
宝蔵：寺の宝物を保管する建物です。
観音堂：享和3年（1803年）に再建されたお堂です。
鐘楼：時を告げる鐘が設置されています。
大師堂：文政7年（1824年）に再建された、弘法大師を祀るお堂です。
白髭稲荷大明神：稲荷神を祀る社です。
五大院、多聞院、華厳院、阿弥陀院、明王院：境内に存在する塔頭です。
池尻鎮守社・白龍弁才天：池尻の鎮守と弁才天を祀る社です。
靖霊殿：八角堂で、1957年（昭和32年）に法隆寺夢殿を模して建立されました。玄奘三蔵の御骨を祀るとともに、日清戦争、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争での岸和田市出身の戦没者の霊を祀っています。
寺務所：寺の運営を行う場所です。
大門：宝永3年（1706年）に再建された、寺の入り口となる門です。
行基の墓：行基の墓と伝えられる場所です。
光明塚古墳：岸和田市指定史跡であり、光明[[皇后]]の遺髪が埋葬されたとされています。
志阿弥法師塚：岸和田市指定史跡で、能の祖とされる志阿弥法師の墓と伝えられる場所です。
伝・聖武天皇の墓、伝・光明[[皇后]]の墓、伝・亀山[[天皇]]の墓：それぞれ岸和田市指定有形文化財となっています。

文化財

久米田寺には、数多くの文化財が所蔵されており、その一部は以下の通りです。

重要文化財

絹本著色星曼荼羅：平安後期に制作されたもので、京都国立博物館に寄託されています。
絹本著色仁王経曼荼羅：平安末期から鎌倉初期に制作されたもので、京都国立博物館に寄託されています。
絹本著色安東蓮聖像：鎌倉後期に制作されたもので、明極楚俊の賛があります。京都国立博物館に寄託されています。
久米田寺文書：鎌倉時代から南北朝時代にかけての古文書で、九条家に関連するものが多く含まれています。大阪歴史博物館に寄託されています。
楠家文書：南北朝時代の楠木正成・正儀親子が久米田寺に送った文書で、大阪歴史博物館に寄託されています。
大塔宮令旨：南北朝時代の大塔宮（護良親王）の令旨を中心に編成され、大阪歴史博物館に寄託されています。
北畠覚空書状：南北朝時代の北畠覚空の書状で、大阪歴史博物館に寄託されています。

大阪府指定有形文化財

久米田寺文書（百十六通）：大阪歴史博物館に寄託されています。

大阪府指定史跡

久米田寺境内

岸和田市指定有形文化財

石造五輪塔：3基が指定されています。
絹本著色華厳海会善知識曼荼羅

岸和田市指定史跡

光明塚古墳
志阿弥法師塚古墳

その他

久米田寺の南東には、大阪府最大の水面積を誇る久米田池があります。この池は、2010年（平成22年）に農林水産省の「ため池百選」に選定され、2015年（平成27年）には国際かんがい排水委員会による「かんがい施設遺産」にも登録されました。

岸和田十月祭礼の際には、久米田池を開削した行基への感謝の意を込めて、八木地区全町と山直地区の一部、計13台の地車が境内に乗り入れ、行基堂前に集まります。

寺院の西側には久米田古墳群が広がっており、その中にある貝吹山古墳は、久米田の戦いで三好実休が城郭として使用したことが発掘調査で確認されています。また、この古墳は「橘諸兄塚」とも呼ばれ、光明[[皇后]]に関連する「光明[[皇后]]塚（光明塚古墳）」も存在します。

前後の札所

和泉西国三十三箇所：22番朝光寺 - 23番久米田寺 - 24番成願寺
和泉八十八ヶ所霊場：87番遍照寺 - 88番久米田寺
阪和西国三十三ヶ所観音霊場：14番宝国寺 - 15番久米田寺 - 16番水間寺

交通

JR西日本阪和線久米田駅より南東へ徒歩約1km
* 南海本線岸和田駅より南海ウイングバス「池尻」下車、南西へ徒歩約300m

参拝者用の無料駐車場も完備されています。

久米田寺は、歴史と文化を感じられる場所として、多くの人々に親しまれています。

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