九鬼隆義

九鬼隆義：三田藩最後の藩主から神戸の街づくりへ

九鬼隆義は、日本の歴史において重要な役割を果たした人物です。摂津三田藩の第13代にして最後の藩主であり、九鬼氏の25代当主として、激動の時代を生き抜きました。従五位下、長門守に叙せられ、子爵、貴族院議員、宮内省準奏御用掛を歴任、死後には従四位を追贈されています。

隆義は丹波綾部藩主・九鬼隆都の三男として生まれました。幼名は啓之助。三田藩主・九鬼精隆の急逝を受け、安政6年（1859年）、養嗣子として三田藩を継承します。

藩主となった隆義は、大胆な藩政改革に乗り出しました。下級藩士である白洲退蔵や小寺泰次郎ら有能な人材を登用し、藩兵の近代化にも尽力。スナイドル銃の導入など、西洋式の軍事技術を取り入れることで、藩の軍事力を強化しました。私生活は質素で、質素な生活を送っていたと伝えられています。

慶応4年（1868年）の戊辰戦争では、当初は佐幕派でしたが、その後勤王派に転じ、新政府に与して戦いました。明治維新後、版籍奉還により藩知事となり、廃藩置県で免官となります。

廃藩置県後の隆義は、神戸へと移住しました。近代港として発展著しい神戸において、隆義は三田藩士を率いて新たな道を切り開きます。生田川付け替えに伴う埋立地の売買で大きな利益を得て、その資金を元に明治6年（1873年）、白洲退蔵や小寺泰次郎らと共に「志摩三商会」を設立。これは神戸初の貿易商社として成功を収め、隆義は不動産や金融業にも進出しました。

隆義の経済活動は、神戸の都市開発に大きな影響を与えました。現在の元町や三宮といった神戸港周辺の開発、女子寄宿学校（神戸女学院の前身）や神戸ホームの創立など、神戸の街づくりに多大な貢献を果たしています。

一方、隆義の私生活にも注目すべき点があります。明治15年（1882年）からは宮内省準奏御用掛華族局に勤務し、明治17年（1884年）には子爵を叙爵、貴族院議員にも選ばれています。また、明治20年（1887年）にはキリスト教の洗礼を受けましたが、その後仏教に帰依しています。

隆義は、福澤諭吉とも親交があり、藩士を慶應義塾に学ばせるなど、教育にも力を注いでいました。彼の子供たちは、海外留学も経験しています。長男・次男は洗礼名を持ち、駐米全権公使を務めた九鬼隆一とともに渡米しています。娘婿の一人、松方幸次郎は、明治政府の重鎮・松方正義の三男です。

明治24年（1891年）、55歳で死去しました。三田心月院に埋葬され、法号は大光院です。九鬼隆義は、藩主としての政治活動、神戸における経済活動、そして教育への貢献など、多方面で活躍した稀有な人物と言えるでしょう。その生涯は、激動の時代を生き抜いた一人のリーダーの物語として、今も人々の記憶に刻まれています。

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