二人静 (小説)

二人静（ふたりしずか）

柳川春葉が1916年（大正5年）に発表した小説『二人静』は、当時の社会情勢や人間関係を色濃く反映した作品として、新派劇や映画など様々な形で展開されました。小説は報知新聞に連載後、至誠堂書店から出版され、多くの読者に感動を与えました。

新派劇としての『二人静』

1917年（大正6年）には、早くも新富座で舞台化され、真山青果の脚色、伊井蓉峰、河合武雄、喜多村緑郎といった当時の名優たちによって演じられました。新派劇としての『二人静』は、その後の新派の代表的な演目として、繰り返し上演されることになります。

映画化された『二人静』

小説の発表と同じ1917年には、小口忠監督により最初の映画化がなされました。その後、1922年には大洞元吾監督、1935年には池田義信監督によって映画が製作されました。

1917年版
監督：小口忠
製作：日活向島撮影所
キャスト：大村正雄、五月操、立花貞二郎

1922年版
監督：大洞元吾
製作：日活向島撮影所
キャスト：中山歌子
長らく女形を起用していた日活向島撮影所が女優である中山歌子を起用したことで話題になりました。

1935年版
監督：池田義信
製作：松竹蒲田撮影所
キャスト：栗島すみ子、山内光、川崎弘子

これらの映画は、いずれもサイレント映画として製作されましたが、1935年版のみ長篇劇映画として製作されました。

『二人静』が描くもの

『二人静』は、複雑な人間関係や葛藤、そして時代の変化の中で生きる人々の姿を描いています。登場人物たちの感情の機微や、社会的な制約の中で生きる女性の苦悩などが、繊細な筆致で表現されています。これらの要素が、時代を超えて人々の心を捉え、新派古典の代表作としての地位を確立しました。

参考文献

『二人静』、至誠堂書店、1917年
* 近代デジタルライブラリー - 『二人静』 後編 柳川春葉著 (至誠堂書店, 1917)

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