二十六人官

共和政ローマの二十六人官（Vigintisexviri）

共和政ローマにおいて、二十六人官（ラテン語: vigintisexviri）は、複数の官職からなるコレギウムであり、その名称は「26人の人」を意味します。この官職は、ローマの政治と行政において重要な役割を担い、特に若手貴族（ノビレス）の子弟にとっては、その後のキャリア形成（クルスス・ホノルム）における最初のステップとなることが多かったとされています。

二十六人官の構成

二十六人官は、以下の6つの部門で構成されていました。

1. 民事訴訟十人裁判官（decemviri Stlitibus Iudicandis）：民事訴訟を扱う裁判官です。
2. 司法三人官（tresviri capitales）：別名ノクトゥルニ（nocturni）とも呼ばれ、警察・司法を担当しました。犯罪者の逮捕、裁判、刑の執行、財産の没収など、治安維持に関わる重要な役割を担っていました。
3. 鋳貨三人官（tresviri aere argento auro flando feriundo）：財務官の監督下で、貨幣の鋳造を担当しました。tresviri monetalesとも呼ばれます。貨幣の品質と流通を管理し、経済の安定に貢献しました。
4. 市内道路保全四人官（quattuorviri viis in urbe purgandis）：ローマ市内の道路の維持管理を監督しました。quattuorviriは「四人官」を意味します。quattuorviri viarum curandarumとも呼ばれました。道路の整備は市民生活の基盤であり、この官職の重要性は非常に高かったと考えられます。
5. 市外道路保全二人官（duoviri viis extra urbem purgandis）：ローマ近郊の道路の維持管理を監督しました。duoviriは「二人官」を意味します。duoviri curatores viarumとも呼ばれました。ローマの版図拡大に伴い、その重要性は増していきました。
6. カプア・クーマエ長官（praefecti Capuam Cumas）：カンパニア属州のカプアとクーマエに派遣された行政官であり、4人が任命されました。属州の行政と治安維持を担当しました。

その他の官職

二十六人官には、随時選出される以下の官職も含まれていました。

聖務担当十人委員会（decemviri Sacris Faciundis）：シビュラの書を管理し、国家の危機に際してその解読を行いました。後に15人に増員されました。宗教的な儀式や神託を司り、国家の安寧に貢献しました。
植民市建設三人委員（triumviri coloniae deducendae）：植民市を建設する際に選出されました。新たな植民都市の建設を指揮し、ローマの勢力拡大を支えました。
* 土地分配十人委員会（decemviri agris dandis assignandis）：公有地（ager publicus）を測量し、分配しました。場合によっては人数が変動しました。土地の分配は社会の安定化に不可欠であり、この委員会の活動は重要でした。

二十六人官の役割と意義

二十六人官は、ローマの行政と司法、経済、宗教、そして軍事において多岐にわたる業務を担っていました。特に、若い貴族の子弟にとっては、この官職がキャリアの出発点となり、政界での成功への足がかりとなりました。例えば、ガイウス・ユリウス・カエサルも、若い頃に市外道路保全二人官としてアッピア街道の修復に携わっています。

プリンキパトゥス期における変化

帝政（プリンキパトゥス）に入ると、アウグストゥス帝は市外道路保全二人官とカプア・クーマエ長官を廃止したため、二十六人官は二十人官（vigintiviri）に再編されました。さらに、紀元13年には、元老院の決定によりエクィテス（騎士階級）が二十人官になることが制限されました。これは、貴族による支配を強化する意図があったと考えられます。

まとめ

二十六人官は、共和政ローマにおいて重要な役割を果たした官職であり、その多様な職務はローマの社会構造を支える基盤となっていました。その変遷は、ローマの政治と社会の変化を反映しており、歴史を理解する上で重要な要素です。

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