二荒芳之

二荒芳之：波乱に満ちた短い生涯

二荒芳之（1889-1909）は、日本の歴史において特異な存在感を放つ人物です。北白川宮能久親王の庶子として生まれ、複雑な出自と短い生涯ながらも、華族として、そして一人の人間として、興味深い足跡を残しました。

幼少期と出自の謎

芳之は、明治22年（1889年）、栃木県で北白川宮能久親王と側室の申橋カネとの間に生まれました。生母である申橋家は日光輪王寺宮元家司に繋がる平民の家系でした。生まれた当初は、彼の出自は明らかではありませんでした。そのため、明治24年（1891年）、能久親王の信頼の厚い浅間牧場主事の黒岩有哉に預けられ、群馬県吾妻郡長野原町で3年間を過ごしました。そこで、快活で明朗大胆な少年時代を過ごしたと伝えられています。明治27年（1894年）からは、応桑村小学校（現在の長野原町立応桑小学校）に通学しました。

父との血縁確認と華族への叙爵

明治28年（1895年）、父である能久親王が亡くなると、芳之は異母弟である上野正雄とともに、親王の子としての認知を求める嘆願を行いました。宮内省による徹底的な調査の結果、芳之が能久親王の五男であることが確認されました。これにより、東京に移り、北白川宮家で養育されることになります。そして、明治30年（1897年）、異母弟の上野正雄とともに伯爵に叙爵され、華族の仲間入りを果たしました。日光二荒山にちなみ「二荒」の伯爵家を創設したことは、彼の出自と運命を象徴する出来事と言えるでしょう。日光は、能久親王がかつて門主を務めていた日光山輪王寺の所在地でもあり、深い因縁を感じさせます。

晩年と死

明治32年（1899年）、芳之の出身地である長野原町応桑村小学校の改築に際しては、北白川宮家から多額の寄付が行われ、同家の紋章が学校玄関に飾られるという栄誉も得ています。しかし、芳之は病気のため学習院中等科を中退。その後は新宿御苑で園芸に携わる生活を送りました。そして、明治42年（1909年）、わずか20歳で、腎臓炎の悪化により亡くなりました。その早すぎる死は多くの人々に衝撃を与えたことでしょう。葬儀は北白川宮邸から青山斎場にて執り行われました。

二荒家の継承と血縁関係

芳之には、異母兄弟として北白川宮成久王、竹田宮恒久王、小松輝久侯爵、上野正雄伯爵らがいました。また、芳之の異母妹である拡子女王は、伊予宇和島藩9代藩主伊達宗徳の九男と結婚し、夫は二荒芳徳と改名して二荒家を継承しました。

短いながらも輝かしい生涯

二荒芳之の生涯は、わずか20年余りと短いものでしたが、その出自、そして華族としての地位、そして園芸への情熱など、様々な側面から見て、興味深い人生であったと言えます。彼の短い生涯は、激動の時代を生きた一人の貴族の物語として、そして、庶子から華族へと至るドラマチックな人生として、後世に語り継がれるべきでしょう。彼の人生は、日本の近代史の一端を垣間見れる貴重な資料となっています。 彼の存在は、時代背景と複雑な人間関係の中で、一つのドラマとして語られるにふさわしいものです。

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