五井蘭洲

五井蘭洲（ごい らんしゅう）

五井蘭洲は、元禄10年（1697年）に生まれ、宝暦12年（1762年）に没した江戸時代中期の儒学者、国学者です。父は儒学者の五井持軒。名は純禎、字は子祥、通称は藤九郎、号は蘭洲のほかに冽庵、梅塢と称しました。本姓は藤原氏です。

生涯

大坂で儒学者の子として生まれた蘭洲は、幼少期に家計の事情から遠戚に預けられ、その後、飯山城下に移り住みました。大坂に戻った後、享保の大火で被災し困窮しますが、中井甃庵に才能を見出され、懐徳堂の助教に就任しました。

江戸では明倫堂で講義を行い、その後、弘前藩の藩士となります。しかし、学問への関心の低さから帰坂し、懐徳堂助教に復帰。中井甃庵を助け、精力的に講義を行いました。晩年は病に苦しみ、有馬温泉で湯治を行うも効果なく、宝暦12年に生涯を閉じました。辞世は「死なん命惜しからぬ身も親と云へば子の無けくらん事ぞ悲しき」

大正8年（1919年）には正五位を追贈されています。

学問的業績

五井蘭洲は、儒学だけでなく国学にも精通し、幅広い分野で著作を残しました。

主な著作

『刪正日本書紀』: 『日本書紀』の和習を添削したものです。
『非伊篇』: 伊藤仁斎の思想を批判的に考察したものです。
『非費篇』
『承聖篇』: 仏教を批判した書。
『読史訪議』: 歴史研究に関する考察が記されています。
『万葉集詁』: 『万葉集』の注釈書であり、歌の解釈や背景について詳細に解説しています。
『古今通』: 『古今和歌集』の注釈書です。
『勢語通』: 『伊勢物語』の注釈書です。
『源語詁』: 『源氏物語』の注釈書。
『源語提要』: 『源氏物語』の概説書。
『蘭洲先生茗話』
『和歌新題百首』
『喩叢』
『駁太宰春台四十六士論』: 太宰春台の『赤穂四十六士論』を批判的に検討したものです。
『非物篇』: 荻生徂徠の『論語徴』を論駁した書。
『鶏肋篇』
『質疑篇』
『瑣語』
『左伝蓄疑』
『爾雅翼』: 中国の辞書『爾雅』の注釈書。
『冽庵日纂』
『蘭洲遺稿』

家族

五井家は藤原魚名を祖とし、代々大和国五井戸を所領としていました。蘭洲の父は儒学者の五井持軒、母は香川氏です。兄弟には、夭折した兄と、鷹司家に仕えた兄がいます。蘭洲の娘せつは、中井竹山の養妹となり、旗本に嫁いでいます。

父：五井持軒
母：香川氏
長兄：五井孫太郎
次兄：五井桐陰
姉：水谷氏に嫁ぐ
妾
女子：せつ

墓所

代々の墓所である天満九品寺が手狭になったため、上本町筋八丁目寺町の実相寺に葬られました。

参考文献

中井竹山撰墓碑銘
西村天囚 『懐徳堂考』 懐徳堂記念会、1925年
大月明 「五井蘭洲について」 『人文研究』第22号、1971年
* 東喜望 「町人黌舎 懐徳堂と五井蘭洲」 『白梅学園短期大学紀要』第18号、1982年

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