井荻町

井荻町（いおぎまち）とは

井荻町は、1926年（大正15年）に東京府豊多摩郡に誕生した町で、現在の東京都杉並区北西部に相当する地域です。その歴史は、1889年（明治22年）に発足した井荻村に遡り、1932年（昭和7年）に東京市に編入されるまで、地域社会の発展に重要な役割を果たしました。

地理

現在の杉並区における井草、下井草、上井草、清水、今川、桃井、善福寺、荻窪（一部）、上荻、西荻北、西荻南（一部）、南荻窪といった地域が、かつての井荻町にほぼ相当します。この地域は、武蔵野台地の一部に位置し、比較的平坦な地形が特徴です。

歴史

地名の由来

井荻町という地名は、1889年（明治22年）に上井草村、下井草村、上荻窪村、下荻窪村が合併して井荻村が発足した際、それぞれの村名から「井」と「荻」の文字を組み合わせて名付けられました。

沿革・年表

1878年（明治11年）11月2日：郡区町村編制法の施行により、多摩郡が分割され、東多摩郡が成立。
1889年（明治22年）5月1日：町村制の施行に伴い、上井草村、下井草村、上荻窪村、下荻窪村が合併し、東多摩郡井荻村が発足。当時の人口は2,925人。
1891年（明治24年）12月21日：甲武鉄道（後の国有鉄道）荻窪駅が開業。
1896年（明治29年）4月1日：南豊島郡と東多摩郡が合併し、豊多摩郡となる。
1921年（大正10年）8月26日：西武軌道新宿軌道線（後の都電杉並線）が荻窪駅南口に乗り入れ。
1922年（大正11年）7月15日：中央本線西荻窪駅が開業。
1926年（大正15年）7月1日：井荻村が町制を施行し、井荻町となる。
1927年（昭和2年）4月19日：西武村山線（後の西武新宿線）が開業。
1932年（昭和7年）10月1日：東京市に編入され、井荻町、杉並[[町]]、和田堀[[町]]、高井戸町の区域をもって杉並区が成立し、井荻町は消滅。

行政

井荻町の役場は、現在の荻窪郵便局と荻窪警察署の間、青梅街道沿いに位置し、現在の杉並区立桃井第一小学校正門前付近にありました。

内田秀五郎町長

1907年（明治40年）に井荻村長に就任した内田秀五郎は、農業資金・資材供給の安定化を目的とした井荻信用購買組合（後の東邦信用金庫、現西武信用金庫）の設立、中央本線荻窪駅 - 吉祥寺駅間の新駅誘致（西荻窪駅として開業）、そして大規模な区画整理を実施しました。特に区画整理は、関東大震災後の宅地化に対応するため、反対者を説得しながら実現し、1933年（昭和8年）には総面積888ヘクタールに及ぶ区画整理が完成しました。彼の功績は、名村長として高く評価されています。

経済

産業

井荻町を含む豊多摩郡では、養蚕業が盛んでした。1915年（大正4年）には、井荻村の養蚕量が郡内で第一位となりました。この地域では、養蚕が重要な産業の一つとして、地域経済を支えていました。

教育機関

井荻町には、以下のような教育機関が存在しました。

東京女子大学
井荻農商公民学校
井荻実修学校
井荻町青年訓練所
桃井尋常高等小学校
桃井尋常高等小学校分校場
桃井第二尋常小学校
桃井第三尋常小学校

これらの教育機関は、地域住民の教育水準の向上に貢献しました。

交通

道路

青梅街道
所沢道

鉄道路線

甲武鉄道（後の国鉄）
荻窪駅
西荻窪駅
西武軌道（後の武蔵水電、帝国電灯、西武鉄道新宿軌道線）
荻窪駅前
西武鉄道村山線
下井草駅
井荻駅
上井草駅

これらの道路と鉄道網は、井荻町の発展と人々の移動を支えました。

関連書籍

東京市臨時市域擴張部 『豊多摩郡井荻町現状調査』 1931年

関連項目

東京都の廃止市[[町村]]一覧

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