交響曲 (ショーソン)

エルネスト・ショーソンの《交響曲 変ロ長調》作品20

エルネスト・ショーソンが作曲した《交響曲 変ロ長調》（フランス語: Symphonie en si bémol majeur）作品20は、彼の生涯で唯一完成された交響曲です。この作品は、ショーソンの音楽的才能と、当時のフランス音楽界の動向を映し出す重要な作品として位置づけられています。

概要

1889年9月に作曲が開始され、1890年12月に完成しました。初演は1891年4月18日、パリのサル・エラールにて、ショーソン自身の指揮によって行われました。初演はまずまずの成功を収めましたが、真価が認められたのは1897年、アルトゥール・ニキシュがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してパリで演奏した時でした。この演奏は大成功を収め、本作は1880年代から1890年代にかけてのフランス交響楽の黄金時代を代表する作品の一つとなりました。

楽曲構成

この交響曲は、ショーソンの親友である画家アンリ・ルロルに献呈されています。当時フランク楽派で主流であった3楽章構成を採用しており、各楽章には以下の発想記号が付けられています。

第1楽章: ラン（緩やかに）〜アレグロ・ヴィーヴォ (Lent - Allegro vivo)
第2楽章: トレ・ラン（きわめて緩やかに） (Très lent)
第3楽章: アニメ（快活に） (Animé)

全曲の演奏時間は約30分から40分程度です。

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器編成で演奏されます。

木管楽器: フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、コーラングレー1、B管クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット3
金管楽器: F管ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ1
打楽器: ティンパニー
その他: ハープ2
弦楽器: 弦五部

解説

ショーソンは多作家ではなく、生涯で39曲の作品しか残していません。彼の管弦楽曲はさらに少なく、若き日に作曲した交響詩《ヴィヴィアーヌ》や管弦楽伴奏歌曲集《愛と海の詩》の他には、この交響曲の後にわずか2曲を作曲したに過ぎません。

本作には、師であるセザール・フランクとリヒャルト・ワーグナーの影響が見られます。特に、ドイツ・オーストリア音楽の伝統的な管弦楽法や半音階技法が取り入れられています。しかし、この作品の最も大きな魅力は、その抒情性にあると言えるでしょう。また、この交響曲は、エドゥアール・ラロ、カミーユ・サン＝サーンス、ヴァンサン・ダンディ、アルベリク・マニャールといった作曲家たちが推進した1880年代のフランスにおける交響楽復興運動の成果を示す作品でもあります。

第1楽章は、暗い過去を呼び起こすような緩やかな導入部から始まり、徐々に盛り上がりを見せ、輝かしい主部へと展開します。第2楽章では、気高く悲痛な抒情性が際立ちますが、オーケストラにとって演奏が難しい箇所が散見され、高名な指揮者であるエドゥアール・コロンヌでさえも躊躇したほどでした。終楽章では、戦場での行進を思わせる力強いモチーフが用いられています。

全曲を通して、フランク流の循環形式が採用されていますが、主題の扱い方はフランクに比べて控えめです。第1楽章の第1主題には、ショーソンが好んで用いたペンタトニック（ただし、レとファの音を抜いたもの）が用いられています。

この交響曲は、ショーソンの音楽的才能を示すとともに、19世紀後半のフランス音楽の歴史を理解する上で欠かせない作品と言えるでしょう。

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