交響曲 (フランク)

交響曲 ニ短調 FWV 48 について

セザール・フランクが作曲した交響曲ニ短調は、フランスにおける交響曲の代表作の一つであり、19世紀後半の重要な交響曲として高く評価されています。フランクには、初期の交響曲ト長調が存在しますが、現在では失われており、このニ短調の交響曲が、実質的に彼の唯一の交響曲として知られています。

概要

この交響曲は、循環形式による堅固な構成が特徴で、主要な主題が全楽章にわたって現れます。フランスの作曲家でありながら、ベルギー生まれでドイツ系の血を引くフランクの作風には、ドイツ音楽からの影響が色濃く反映されています。特に、ベートーヴェンやワーグナーからの影響が指摘され、フランス人によるドイツ風の交響曲と評されることもあります。

作曲の経緯と初演

フランクの主要作品は晩年に集中しており、この交響曲もその一つです。1880年代後半、ラロ、サン＝サーンス、ダンディといった作曲家たちが交響曲を発表したことに触発され、弟子たちからの勧めもあって、フランクも交響曲の作曲に着手しました。1887年秋には草稿が完成し、1888年 8月22日に完成しました。楽譜は、フランク自身による四手連弾編曲とともに1888年に出版され、弟子のアンリ・デュパルクに献呈されました。

初演は1889年2月17日、ジュール・パドルーの指揮でパリ音楽院演奏協会にて行われましたが、評価は芳しくありませんでした。当時の批評家からは「荒涼とした、陰湿な交響曲」と酷評されましたが、フランクは自分の理想通りの音が響いたことに満足していたと言われています。初演は不評に終わりましたが、フランクの死後、シャルル・ラムルーによって再演されたことがきっかけで、広く評価されるようになり、20世紀初頭には「古典」と称されるほどに受け入れられるようになりました。

楽器編成

この交響曲の楽器編成は以下の通りです。

木管楽器: フルート2、オーボエ2、コーラングレ1、クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット2
金管楽器: ホルン4、トランペット2、コルネット2、トロンボーン3、チューバ1
打楽器: ティンパニ
ハープ
* 弦楽器: 第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

フランクのオーケストレーションは、ドビュッシーやラヴェルのような華やかさとは対照的に、ドイツ風の重厚で渋い音色が特徴です。また、オルガンを思わせる響きも多く、オルガン用に編曲されることもあります。当時としては珍しく、コーラングレを交響曲に用いたことも、保守的な聴衆を困惑させる一因となりました。

曲の構成

この交響曲は、4楽章構成が一般的な交響曲とは異なり、スケルツォ楽章を欠いた3楽章構成となっています。ただし、第2楽章の中間部にはスケルツォ的な性格が見られます。演奏時間は約40分です。

第1楽章：レント - アレグロ・ノン・トロッポ

ソナタ形式で、ニ短調で書かれています。荘重なレントの導入部で始まり、低弦が奏でる問いかけるような動機が全曲を貫く中心的な役割を果たします。この中心動機は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲やリストの交響詩との類似性も指摘されています。

アレグロ・ノン・トロッポにテンポが上がると、中心動機が第1主題として力強く現れます。その後、ヘ短調で繰り返され、三度関係の転調が用いられます。ヘ長調に転じると、流れるような経過主題が現れ、総奏で第2主題が現れます。展開部では、既出の動機が次々と現れ、再現部では、第1主題、経過主題、第2主題がそれぞれ再現されます。コーダでは、再び第1楽章の冒頭の動機が現れ、ニ長調で終結します。

第2楽章：アレグレット

複合三部形式の緩徐楽章で、中間部はスケルツォとなっています。変ロ短調で、トロンボーンとチューバを欠いた編成で演奏されます。冒頭では、弦楽器のピッツィカートとハープが和音を示し、その後、イングリッシュホルンによる旋律が現れます。この旋律は、第1楽章の中心動機から派生しています。スケルツォ部はト短調で始まり、弱音器をつけた弦楽器が演奏します。トリオ部分では、クラリネットがマズルカ風のリズムを提示します。スケルツォの動きが再び現れると、冒頭の旋律が対位法的に重ねられ、緩徐部とスケルツォ部が結合された形で変ロ短調に戻り、静かに終結します。

第3楽章：フィナーレ：アレグロ・ノン・トロッポ

ソナタ形式の終楽章で、ニ長調で書かれています。フランクは、この楽章で「すべての主題を再び扱い、新しい構成要素として役割を与える」と述べています。激しい導入部に続き、低音で第1主題が現れ、ロ長調の経過主題、半音階的な旋律を経て、第2楽章の冒頭主題が第2主題として登場します。

展開部で既出の主題が扱われた後、第1主題が総奏で再現されます。続いて、第2主題も再現され、ニ長調に解決します。コーダでは、第1楽章の第2主題と、長調に転じた中心動機が静かに響き、最後に第3楽章の第1主題がクライマックスを築いて力強く終わります。

まとめ

フランクの交響曲ニ短調は、その独特な構成と重厚な響きで、多くの聴衆を魅了し続けています。初演時は不評でしたが、今日ではクラシック音楽の重要なレパートリーとして、世界中で演奏されています。

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