交響曲第1番 (シューマン)

ロベルト・シューマン 交響曲第1番 変ロ長調 作品38「春」

ロベルト・シューマンの交響曲第1番変ロ長調作品38「春」（Sinfonie Nr. 1 B-Dur op. 38 "Frühling"）は、1841年1月から2月にかけて作曲されました。同年3月31日、メンデルスゾーン指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演され、ザクセン国王フリードリヒ・アウグスト2世に献呈されました。演奏時間は約33分です。

作曲の経緯

シューマンは、1832年にト短調の交響曲を試みましたが、これは未完に終わりました（『ツヴィッカウ交響曲』）。1838年から1839年にかけて、シューベルトの兄を訪ね、ハ長調交響曲（D.944）の自筆譜を発見しました。この発見は、シューマンに大きな影響を与えました。1840年にはクララ・ヴィークと結婚し、歌曲を多数作曲する傍ら、バッハやウィーン古典派の研究も行いました。ハ短調交響曲の構想も持ちましたが、これも完成には至りませんでした。

このような状況下で、第1交響曲は1841年1月から2月という短い期間で完成しました。スケッチはわずか4日間だったと言われています。初演は好評で、シューマン自身も「ベートーヴェン以降の近代の交響曲として、かつてない共感を得られた」と述べています。

初稿

1841年3月31日の初演で用いられたのが初稿です。曲の構成は改訂稿と変わりませんが、オーケストレーションに違いがあり、冒頭のファンファーレなど旋律自体が異なる箇所も存在します。ファンファーレについては、初演リハーサルで意図した音が出ないことが判明し、メンデルスゾーンのアドバイスで現在の音に変更されました。初稿では各楽章に標題が与えられていました（第1楽章「春の始まり」、第2楽章「夕べ」、第3楽章「楽しい遊び」、第4楽章「たけなわの春」）。自筆総譜はアメリカ議会図書館に所蔵されており、スウィトナーによる録音が存在します。

改訂稿

シューマンは初演後も推敲を重ね、1841年末にパート譜、1853年に総譜を出版しました。一般に演奏されるのはこちらの稿です。初稿で与えられていた各楽章の表題は削除されています。改訂版の初演は1842年11月3日、ダヴィッドの指揮で行われました。

副題「春」について

この曲は、ベトガーの詩に触発されたとされ、当初は「春の交響曲」と呼ばれていました。シューマンは、第1楽章について、トランペットが春の訪れを告げ、蝶が舞う様子を暗示すると述べています。

楽器編成

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、トライアングル、弦五部。

楽曲構成

第1楽章: Andante un poco maestoso - Allegro molto vivace 変ロ長調。序奏付きのソナタ形式。序奏はファンファーレ風な動機で始まり、シューベルトの影響が指摘されています。主部は弦楽による沸き立つような旋律で、第2主題は木管が穏やかに奏でます。展開部ではトライアングルも使用され、再現部を経てコーダに至ります。
第2楽章: Larghetto - attaca 変ホ長調。ABACAの形式で、弦による夢見るような旋律が特徴です。中間部は不安げな動機を繰り返します。トロンボーンがスケルツォ主題を予告し、第3楽章に続きます。
第3楽章: Scherzo. Molto vivace ニ短調。2つの中間部を持つスケルツォ。各トリオはそれぞれ異なる調と拍子を持ちます。
第4楽章: Finale. Allegro animato e grazioso 変ロ長調。序奏付きソナタ形式。付点リズムの音型が重要な役割を果たします。第1主題はピアノ的な動きが特徴で、第2主題はユーモラスな動機と付点リズムが組み合わさっています。展開部を経て再現部、コーダへと続きます。

オーケストレーションの変更・改訂

マーラーは、初稿のファンファーレを復活させ、ティンパニの変更や金管の増強など、大胆な変更を行っています。このマーラー版は、チェッカート、シャイー、スダーンによって録音されています。


シューマンの交響曲第1番「春」は、彼の交響作品の出発点であり、その後の作品にも影響を与えた重要な作品です。春の喜びと希望に満ちたこの交響曲は、今日でも多くの人々に愛されています。

もう一度検索