交響曲第3番 (サン＝サーンス)

交響曲第3番 ハ短調 作品78「オルガン付き」

カミーユ・サン＝サーンスが1886年に作曲した交響曲第3番ハ短調作品78は、彼の交響曲の中でも最も有名で、「オルガン付き」の愛称で親しまれています。ロンドン・フィルハーモニック協会からの委嘱で作曲され、サン＝サーンス自身の指揮によってロンドンで初演されました。

この作品についてサン＝サーンスは、「この曲には私が注ぎ込める全てを注ぎ込んだ」と語っており、彼の言葉通り、この交響曲には名人芸的なピアノの楽句、華麗な管弦楽法、そして教会のパイプオルガンの荘厳な響きがふんだんに盛り込まれています。初演は大成功を収め、サン＝サーンスは「フランスのベートーヴェン」と称賛されました。

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器によって演奏されます。

木管楽器: ピッコロ1（3番フルート持ち替え）、フルート3、オーボエ2、イングリッシュホルン1、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: ホルン4（1番・2番はナチュラルホルン、3番・4番はヴァルヴ付き）、トランペット3（第2楽章では3番トランペットにナチュラルトランペットが指定）、トロンボーン3、チューバ1
打楽器: ティンパニ（3個）、トライアングル、シンバル、バスドラム
鍵盤楽器: オルガン、ピアノ（奏者2人）
弦楽器: 第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

曲の構成

全2楽章構成で、演奏時間は約35分です。

第1楽章: アダージョ - アレグロ・モデラート - ポコ・アダージョ
ハ短調 - 変ニ長調、8分の6拍子 - 4分の4拍子
ソナタ形式と緩徐楽章が組み合わされた構成で、循環主題が用いられています。シューベルトの「未完成交響曲」を彷彿とさせる弦の響きから始まり、オルガンが加わることで瞑想的な雰囲気が醸し出されます。
第2楽章: アレグロ・モデラート - プレスト - マエストーソ - アレグロ
ハ短調 - ハ長調、8分の6拍子 - 4分の6拍子
スケルツォとフィナーレが組み合わされた構成で、弦楽器による力強い旋律から始まり、木管楽器とピアノが活躍するトリオを経て、オルガンの壮麗な響きとともにクライマックスを迎えます。循環主題が全体を通して効果的に用いられています。

この交響曲の最大の特徴は、ピアノ（2手または4手）とオルガンという鍵盤楽器の独創的な使用法です。一見すると4楽章構成のように見えますが、実際には2つの楽章に圧縮されており、サン＝サーンスは伝統的な形式を踏襲しつつ、新しい交響曲の形を追求しました。

循環主題の技法

この交響曲では、循環主題の技法が創造的に用いられています。サン＝サーンスはリストと親交があり、この作品はリストの主題変容の理論の影響を受けています。楽曲全体を通して、主題が進化し、変容していく様子が伺えます。第1楽章の循環主題はグレゴリオ聖歌の「怒りの日」と音形が一致しており、サン＝サーンスの音楽に対する深い造詣が感じられます。

大衆文化への引用

第2楽章の第2部、特にオルガンが登場する部分は、その荘厳な響きから、映画やテレビ番組などでしばしば使用されています。

1977年には、スコットランドの歌手スコット・フィッツジェラルドとオランダの歌手イヴォンヌ・キーリーによって、第2楽章・第2部の主題に歌詞を付け、レゲエ調にアレンジした「If I Had Words」が発表されました。
1995年の映画『ベイブ』の挿入歌・エンディングテーマとして使用されました。
アニメ『ルパン三世』のいくつかのエピソードで、印象的な場面の音楽として使用されました。
TBS系のミニバラエティ番組「ヨハネの洗礼」のオープニングにも使用されました。

外部リンク

交響曲第3番 ハ短調 作品78, R. 176『オルガン付き』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
* サン=サーンス 交響曲第３番のスコア - IUDLP: The Indiana University Digital Library Program

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