交響曲第3番 (大澤壽人)

交響曲第3番について

日本の作曲家、大澤壽人によって作曲された交響曲第3番は、彼の3番目の交響曲であり、1937年に完成しました。この作品は、単なる交響曲の枠を超え、当時の時代背景や作曲家の想いが色濃く反映された、聴きごたえのある作品です。

作曲の経緯

1936年、大澤壽人は留学先のパリから帰国し、その年の11月に交響曲第3番の作曲に着手しました。そして、翌1937年2月11日、紀元節という祝日に完成を迎えます。この作品は、3年後に迫った皇紀2600年を意識して作曲されたものであり、当時の時代背景が色濃く反映されています。皇紀2600年を記念した奉祝曲としては、信時潔や橋本國彦らの作品が知られていますが、大澤はこの交響曲第3番を一足早く完成させていたことになります。

初演

交響曲第3番は、1937年4月7日に日比谷公会堂で初演されました。作曲者自身が指揮を務め、新交響楽団（現在のNHK交響楽団）によって演奏されました。この初演の際には、『建国の交響楽』という副題が与えられ、作品の性格をより明確に示していました。

作品の内容

この交響曲は、全4楽章で構成されています。各楽章には、大澤独自の音楽的アイデアと、当時の時代背景が複雑に絡み合っています。

第1楽章: Allegro risoluto-Allegro

ニ長調で始まり、ティンパニと低弦のトレモロが印象的な楽章です。音楽は断片的に進み、第2楽章を予告するフレーズが弦楽器によって提示されます。変ロ長調の響きの中で主部に入ると、木管楽器が半音階的に揺れ動き、ニ短調の第1主題が現れます。その後、ティンパニが鳴り響き、重苦しい第2主題が登場します。やがて、弦楽器に導かれ、哀愁を帯びた旋律が現れます。展開部では、2つの主題が展開され、再現部では木管楽器に第1主題が現れ、盛り上がりを見せた後、シンバルの強打とともに激しい響きとなり、ニ長調主和音で曲を閉じます。

第2楽章: Adagio grazioso

弦楽器の繊細な響きで開始される、緩徐楽章です。その上に木管楽器が断片的な旋律を奏でます。雅楽を思わせる和の響きが特徴的です。クラリネットに、やや粘着性のある旋律が現れます。2つの旋律は美しく展開され、低弦の行進曲のリズムの上で静かに曲を閉じます。

第3楽章: Moderato

「幻想風メヌエット」と名付けられた、独特な雰囲気を持つ楽章です。弦楽器の細かいアルペジオの上で、木管楽器が第1のメヌエットを奏でます。その響きは、どこか薄暗い印象を与えます。続いて、「ピョンコ節」のリズムによる第2のメヌエットが登場します。途中、フルートが日本の古謡「さくら」を断片的に奏でます。クライマックスを迎えると、トリオに入り、ホルンがベートーヴェン風のト長調の旋律を奏でます。この部分は、西洋音楽的な響きを持っていますが、次第に日本の都節音階によって歪められ、第1のメヌエットが再現されます。第2のメヌエットも再現され、ニ短調で静かに曲を閉じます。

第4楽章: Allegro non troppo con fuoco

ニ長調で、シンバルの強打とともに勢いよく開始される楽章です。静かになった後、弦楽器にニ短調の行進曲風の第1主題が現れます。盛り上がってくると、金管楽器に「ピョンコ節」のリズムによる第2主題が激しく登場します。2つの主題が展開されていき、弦楽器の嬰ヘ長調主和音に導かれ、次第に賛歌のような性格を帯びてきます。しかし、すぐに憂鬱な表情に戻り、リズミカルにニ短調の和音を打ち鳴らし、最後はニ長調主和音が鳴り響き、曲を閉じます。

録音

この交響曲は、ドミトリ・ヤブロンスキー指揮、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団によって録音されています。この録音は、Naxosレーベルからリリースされ、『神風協奏曲』とのカップリングで聴くことができます。

この交響曲は、大澤壽人の音楽的才能と、当時の日本の時代背景が融合した、非常に興味深い作品です。ぜひ、一度聴いてみてください。

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