交響曲第5番 (オネゲル)

アルチュール・オネゲル 交響曲第5番『三つのレ』

アルチュール・オネゲルが1950年に完成させた交響曲第5番『三つのレ』は、クーセヴィツキー財団からの依頼で作曲された彼の最後の交響曲です。初演は1951年、シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団によって行われました。

この作品の最大の特徴は、全3楽章が全て「ニ（レ）」の音で終わる点にあります。この特徴から、イタリア語で「3人の王」を意味する言葉遊びにもかけられ、『三つのレ』というタイトルが付けられました。また、この作品は、セルゲイ・クーセヴィツキーの亡妻ナターリヤに献呈されています。

1947年に狭心症の発作で倒れた後、オネゲルは心身ともに不調を抱え、創作意欲を失いつつありました。そのような状況下で完成された本作は、彼の苦悩が色濃く反映された、重く、暗い雰囲気に満ちています。この作品以降、オネゲルが完成させたのは1953年の『クリスマス・カンタータ』のみで、1955年にこの世を去りました。

第2楽章では、オネゲル自身が「ある種の十二音技法を試みた」と述べています。これは、シェーンベルクのような厳密な十二音技法とは異なりますが、12の音を均等に扱い、無調音楽に接近しようとする試みが見られます。このように、普段十二音技法を用いない作曲家が、作品の一部で十二音技法（風の書法）を試みる例は、他にもショスタコーヴィチの交響曲第15番、ストラヴィンスキーの『七重奏曲』、デュティユーの『メタボール』などが挙げられます。

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器によって演奏されます。

ピッコロ
フルート3
オーボエ2
イングリッシュホルン
クラリネット2
バスクラリネット
ファゴット3
コントラファゴット
ホルン4
トランペット3
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ（任意）
弦五部

楽曲構成

この交響曲は、以下の3つの楽章で構成されています。

第1楽章: Grave
3/4拍子。重々しいコラールで始まり、全体を通して厳しい表情が続きます。
第2楽章: Allegretto
3/8拍子。2つのトリオを持つスケルツォ風の楽章。第1ヴァイオリンとクラリネットが主題を提示した後、弦楽器とファゴットがこの主題を繰り返します。
第3楽章: Allegro marcato
4/4拍子。3本のトランペットが第1主題を提示します。ポリフォニーを駆使した激しい展開の後、力を落として静かに終結します。

参考文献

最新名曲解説全集3 交響曲III（音楽之友社）

外部リンク

交響曲第5番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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