交響曲第8番 (ヴォーン・ウィリアムズ)

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ：交響曲第8番 ニ短調

英国を代表する作曲家、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズが1953年から1955年にかけて作曲した交響曲です。彼の全9曲の交響曲の中で第8番にあたり、前作である大編成の『南極交響曲』（第7番）や、最後の交響曲となった第9番と比較すると、規模はやや抑えられ、より古典的な構成を持っています。作品全体からは、いくらか肩の力の抜けたような軽快さや、独特のユーモアが感じられるのが大きな特徴です。

初演

本作の初演は1956年5月2日、英国マンチェスターで行われました。指揮は、この曲を献呈されたジョン・バルビローリが務め、ハレ管弦楽団が演奏しました。

楽器編成

以下のような多様な楽器が用いられています。特に打楽器セクションが充実しており、その多彩さが終楽章で効果的に活かされます。特定のゴングについては、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』で使用されるものと同様で、「不可欠ではないが非常に望ましい」との作曲者による注記があります。

• - フルート2（うち1人はピッコロ持ち替え）
• - オーボエ2
• - クラリネット2
• - ファゴット2（第2楽章のみ任意で3人目を使用）
• - ホルン2
• - トランペット2
• - トロンボーン3
• - ティンパニ
• - 打楽器（奏者5名）：トライアングル、シンバル、大太鼓、小太鼓、ヴィブラフォン、シロフォン、グロッケンシュピール、チューブラーベル、音程のあるゴング
• - チェレスタ
• - ハープ（任意で2挺目を使用）
• - 弦五部（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

楽曲構成

全体は4つの楽章から構成されており、全曲を通しての演奏時間は約26分半と比較的コンパクトです。ヴォーン・ウィリアムズの交響曲のうち、力強く大音量で終結するのは、この第8番と第4番のみです。

第1楽章：ファンタジア（主題のない変奏曲）

ニ短調。形式は変則的な変奏曲です。作曲者自身はこの楽章について、後に「主題を探す7つの変奏」と表現しています。明確な主題が提示されるのではなく、断片的な要素から展開していくような構成が特徴です。

第2楽章：行進曲風スケルツォ（管楽器のために）

ハ短調。この楽章は、管楽器のみで演奏される点が大きな特色です。形式は三部形式で、アレグロ・アラ・マルチャ（行進曲風の速さで、4分の2拍子）の主部と、アレグレット（やや速く、8分の6拍子）のトリオが対比されます。

第3楽章：カヴァティーナ（弦楽器のために）

ホ短調。こちらも、弦楽合奏のみで演奏される緩徐楽章です。レント・エスプレッシーヴォ（遅く、感情豊かに、4分の4拍子）と指示されており、深い抒情性が表現されます。第2楽章の管楽器のみと対をなすように、楽器編成が限定されています。

第4楽章：トッカータ

ニ長調/ニ短調。モデラート・マエストーソ（中くらいの速さで荘厳に、4分の3拍子）で始まります。この楽章では、多彩な打楽器が華々しく活躍し、楽曲全体に活気を与えています。終楽章にふさわしく、壮大な頂点を築き上げ、歓喜に満ちた雰囲気の中で全曲が閉じられます。

参考文献

• - 『最新名曲解説全集』 補巻第1巻（音楽之友社）
• - 『交響曲第8番』 総譜（オックスフォード大学出版局）

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