京福電気鉄道モハ5001形電車

京福電気鉄道モハ5001形電車：地方鉄道の近代化と再生を象徴する車両

京福電気鉄道モハ5001形電車は、1990年代後半、厳しい経営状況に直面していた京福電気鉄道福井鉄道部によって導入された通勤形電車です。長年の赤字経営により老朽化した車両の更新が困難な状況の中、沿線自治体からの補助金を得て、実に41年ぶりとなる新造車両の導入が実現しました。この車両は、京福電気鉄道にとって最後の自社発注車両という点でも歴史的に重要な存在です。

厳しい財政状況と部品の再利用

1990年代、京福電気鉄道福井鉄道部は乗客減少による経営悪化に悩まされていました。廃線も検討されるほどの厳しい状況下で、車両の更新は容易ではありませんでした。そのため、他社からの譲渡車両が多く運用されており、近代的な車両の導入は絶望視されていました。

しかし、沿線自治体からの補助金を得て、近代化に向けた取り組みがようやく実現しました。予算の制約から、車体は新造されましたが、クーラー、主制御器、制動装置などは、他社で使用されていた車両からの流用部品を積極的に活用しました。具体的には、豊橋鉄道1900系や阪神電鉄5261形からの部品を再利用することで、コスト削減を実現しています。台車や主電動機に至っては、国鉄101系や111系で使用されていたものが、豊橋鉄道1900系を経て再利用されています。その他にも、京福電鉄の在庫部品やバス用部品までもが活用されています。まさに、限られた予算の中で最大限の努力が凝縮された車両と言えるでしょう。

斬新なデザインと車両の特徴

車体デザインは、前面が特徴的な「く」の字形にデザインされ、従来の車両とは一線を画す斬新なイメージを演出しています。側面には片開き3扉を採用し、乗降効率の向上を目指しました。座席はロングシートとなっており、通勤電車としての機能性を重視した設計です。集電装置には下枠交差形パンタグラフが採用されています。

運用と事故、そしてえちぜん鉄道へ

2両が製造され、2000年1月から運用が開始されました。5001号車は青を基調に恐竜のイラストが描かれた「ダイナソートレイン」として、5002号車はクリーム色を基調に青いラインと黄色いストライプが配されたデザインで運行されました。2000年には、勝山市で開催された「恐竜エキスポふくい2000」に合わせて2両での運転も実施され、特急や急行での運用にも就くなど活躍の場を広げました。

しかし、2001年6月、越前本線の保田駅-発坂駅間で発生した列車衝突事故により、5002号車が大破して廃車となりました。この事故は、信号無視が原因と判明し、京福電気鉄道福井鉄道部全体に大きな衝撃を与えました。この事故を契機に、京福電鉄は福井鉄道部の路線全廃を決定、そして全線運休に追い込まれることとなります。

その後、沿線自治体等の出資により第三セクター鉄道であるえちぜん鉄道が発足。2003年、えちぜん鉄道は永平寺線以外の路線を引き継ぎ、運行を再開しました。モハ5001形はMC5001形に改称され、残された5001号車のみがえちぜん鉄道に引き継がれ、カラーリングを変更して再び運行を開始しました。

技術革新への取り組み

2006年には、福井口駅において、福井大学によるリチウムイオン二次電池の走行実験が行われました。この実験は、えちぜん鉄道の車両だけでなく、以前は福井鉄道の車両でも実施されており、技術革新への積極的な姿勢を示しています。

主要諸元

車長：20,020mm
車幅：2,772mm
車高：4,155mm
自重：39.0t
定員：111名（座席43名）
台車：DT21
電動機：直巻整流子電動機 MT46(80kW)×4
歯車比：5.6
制御方式：電動カム軸式直並列弱め界磁制御付き抵抗制御(PE-30-2A) 最終4ノッチ
駆動方式：中空軸平行カルダン駆動方式
制動方式：電磁直通ブレーキ（保安ブレーキ付き）
冷房装置：交流式ユニットクーラー（屋根上に設置）

モハ5001形電車は、厳しい経営環境の中、地域住民の期待を背負い、近代化への努力と技術革新への挑戦を象徴する車両として、その歴史に刻まれています。わずか2両の製造という短命な歴史でありながらも、その存在感は非常に大きく、現在もえちぜん鉄道で活躍する姿は、地方鉄道の再生への希望を物語っています。

もう一度検索