人民艦隊

人民艦隊とは

人民艦隊（じんみんかんたい）は、1950年代に日本共産党が中華人民共和国や北朝鮮へ密航するために構成された船のグループを指します。この呼称は比喩的なものであり、実際には中華人民共和国の人民解放軍海軍や北朝鮮の朝鮮人民軍海軍の艦隊とは関係ありません。

背景

日本は島国であり、海外へ逃れるためには海を利用するしかありませんでした。そのため、共産党員は漁船を購入したり、不要になった漁船を改造して密航に使用しました。これらの船は当然、軍艦と呼ばれるような大規模なものではなく、あくまで漁船レベルの物でした。

1958年の騒動

1958年の3月22日、警視庁は中華人民共和国への日本共産党幹部の密入国を助けた容疑で漁船「第1勝漁丸」の船長らを逮捕しました。この事件では全国で37カ所に対する家宅捜索が行われ、多くのメディアが大きく報じました。この報道の中で「人民艦隊」という言葉が用いられ、一般にも広く認識されるようになりました。どのようにこの名前が付けられたのかは不明ですが、共産党内の隠語だった可能性もあります。報道によれば、静岡県の焼津や伊東、愛媛県の新居浜に出撃基地があるとされました。

この一連の騒動の中で、同年の4月12日には日本共産党中央委員の岡田文吉らが逮捕され、特に岡田は人民艦隊の責任者とされました。

船団の実態

「朝日新聞」の1958年4月14日付の記事によれば、人民艦隊には約30トン前後の漁船が13隻編成されていました。これらの船は1951年から1955年にかけて調達されたものであり、密出国を試みた数千人がこの船団を利用して中華人民共和国へ向かいました。その中には有名な共産党員である伊藤律や野坂参三が含まれており、徳田球一は病気のため一般の旅客船で亡命したとされています。一部の船は北朝鮮との間を往来した事例もありました。

法的問題

検挙の結果、日本共産党は人民艦隊の運用が困難になりました。そして、1958年7月14日には引き揚げ船「白山丸」が利用され、54人が集団で帰国し、逮捕されました。民主主義や人権に関する議論が続く中、1958年の事件は注目を集めました。

その後、人民艦隊に関わった者たちが逮捕・起訴されましたが、1960年3月31日には東京地方裁判所が出入国管理令違反の確実な証拠がないとして、被告全員に無罪を言い渡しました。ただし、実際に密出国し逮捕された者たちは有罪判決を受け、執行猶予が付いた状態でした。

まとめ

人民艦隊は日本共産党が活動した歴史の一部であり、冷戦の影響を受けた密航の試みを象徴しています。この事件は日本における政治的な動きや社会状況を考察する材料としても重要です。

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