他田舎人千世売

他田舎人千世売（おさだ の とねり の ちよめ）

他田舎人千世売は、生没年不詳の奈良時代の女性です。

出自

他田氏は、敏達天皇の訳語田幸玉宮に由来する名代である他田部の伴造氏族です。その祖は、科野国造であった金指舎人麻背の弟・目古が他田舎人直姓を賜ったことに始まります。天平時代の正税帳にも他田の氏名が見られることから、駿河国や信濃国に分布していたことがわかります。

経歴・人物

千世売は信濃国伊那郡（現在の長野県伊那地方一帯）の出身で、若い頃から才能と美貌に恵まれ、家は豊かでした。25歳で夫と死別した後、彼女は生涯貞節を守り、50年以上にわたり寡居しました。この貞節な生き方が称徳天皇の耳に届き、神護景雲2年（768年）6月には、その功績を称えられて爵二級を賜りました。

彼女の生き方は、当時の賦役令17「孝子順孫条」で定められた「節婦」の模範であり、同条が定める「精誠の通感する者」への褒賞が適用されたと考えられます。「精誠の通感する者」とは、美徳が神に通じて奇跡を生じた者のことを指し、千世売の行いがそれに見合うものとして評価されたことを示しています。

脚注

他田部の伴造氏族である。
信濃国伊那郡の出身である。
25歳で夫と死別後、50年以上寡居。
称徳天皇から爵二級を賜る。
賦役令の「節婦」に相当。

参考文献

『続日本紀』2 新日本古典文学大系13岩波書店、1990年
『続日本紀』4 新日本古典文学大系15岩波書店、1995年
『続日本紀』全現代語訳（上）・（中）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1992年
『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編、雄山閣、2015年

関連項目

紀音那
家原音那
四比信紗
額田部蘇提売
直玉主売

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