仙台市立片平丁小学校

仙台市立片平丁小学校は、宮城県仙台市青葉区片平一丁目に位置する公立小学校です。仙台市の中心部にあり、周囲には仙台高等裁判所や東北大学片平キャンパスといった学術・司法の中心的な機関が立地しています。2021年度時点では、541名の児童が在籍し、19学級編成で、32名の教職員が教育活動にあたっていました。卒業生の多くは、仙台市立五橋中学校に進学しています。

概要と歴史

本校の起源は、1868年（明治元年）に岡千仭が当地に開いた私塾「麟経堂（りんけいどう）」の流れを汲むとされています。学制が公布され小学校が整備される中で、1873年（明治6年）6月27日に「五番小学校」として開校しました。当初から大規模な学校であり、開校時には教員2名に対し、男子531名、女子95名の合計626名の児童が学んでいました。

その後、1874年（明治7年）に一度「片平丁小学校」と改称しましたが、1876年（明治9年）には仙台区内の小学校名が一斉に雅称に変更された際、「育才小学校」となりました。しかし、わずか3年後の1879年（明治12年）には再び旧称である「片平丁小学校」に戻り、以降は制度改正に伴う「小学校」の部分の名称変更のみが行われています。1910年（明治43年）には児童数が917名に増加し、学校規模の拡大が進みました。

沿革に見る教育の歩み

片平丁小学校の沿革は、日本の近代教育史における様々な変遷と、地域における教育への熱意を反映しています。明治期には、裁縫科の設置（1880年）や川内亀岡、南町への支校開設（1880年、1885年）など、教育内容や対象の拡充が図られました。校地も1884年（明治17年）に拡張され、現在の基礎が築かれています。また、1899年（明治34年）には仙台市内で初めて両親参観を実施、1901年（明治34年）には宮城県下で初めて保護者懇談会を創設するなど、保護者との連携を重視した先進的な取り組みが行われました。1903年（明治36年）には朝礼会も開始されています。

大正期に入ると、1914年（大正3年）に後述の校歌が制定され、上巳文芸会や端午演技会といった文化行事、夏季林間教養所や野蒜海浜教養園といった野外教育活動が始まりました。卒業児童の記念旅行（1911年）なども実施されています。

昭和期には、1931年（昭和6年）に児童の健康増進のため肝油の服用を開始するなど、保健衛生にも配慮が見られます。しかし、太平洋戦争の戦禍は学校にも及び、1944年（昭和19年）には北校舎が焼失。復興が進んだものの、1948年（昭和23年）には火災により全校舎を失うという大きな被害を受けました。戦後復興期には、他校に校舎の一部を貸与するなど、地域の教育を支える役割も担いました。

戦後、1947年（昭和22年）に学校教育法が施行され、現在の「仙台市立片平丁小学校」へと改称されました。同年には父母教師会（PTA）が創立され、学校運営への保護者の関与が始まりました。1951年（昭和26年）には仙台市内の全小学校に先駆けて完全給食が開始されるなど、児童福祉の向上も図られました。

本校は、昭和30年代以降、理科教育、PTA運営、教育課程、放送教育、創造性、社会科教育など、様々な分野で研究指定を受け、教育方法の研究開発に積極的に取り組んできました。また、PTA活動も活発で、文部大臣表彰を受けるなど高い評価を得ています。

施設面では、2000年（平成12年）に新体育館が完成し、2003年（平成15年）には校舎の耐震補強工事が行われました。特筆すべきは、2008年（平成20年）に完成した校庭の芝生化で、これは仙台市内では唯一の取り組みとして知られています。

課外活動では、1962年（昭和37年）に片平鼓笛隊が創設されて以来、音楽活動が盛んに行われています。吹奏楽コンクールでの金賞受賞（1987年）や、マーチングバンドが全国植樹祭などのイベントに参加（1997年）するなど、顕著な実績を上げています。また、スポーツ分野ではミニバスケットボールチームが全国大会に出場（1993年）するなど、文武両道を目指す教育が行われています。

国内外との交流も積極的に行われており、北海道白老小学校との姉妹校提携（1978年）や、ASEAN諸国からの教育視察（1993年）、フィンランドやアメリカの学校との交流（1997年～1999年）など、国際理解教育にも力を入れています。

校歌

片平丁小学校の校歌は、詩人・歌人として名高い土井晩翠が作詞し、大槻貞一が作曲を手がけました。1914年（大正3年）に制定されたもので、全5番からなる比較的長い楽曲です。現在の歌唱においては、一部に今日では不適切とされる表現が含まれるため、特に4番は歌われないことが多く、日常的には1番のみ、運動会などの行事では1番から3番までが歌われるのが一般的です。校内には、同窓生から贈られた校歌の歌碑が建立されています。

著名な出身者

長い歴史の中で、多くの著名な卒業生を輩出しています。囲碁棋士の一力遼氏、細菌学者の志賀潔氏、河北新報社創設者の一力健治郎氏、新宿中村屋創設者の一人である相馬黒光氏、化学者の野副鉄男氏、工学者で東北大学総長などを歴任した西澤潤一氏、経済学者の大河内一男氏、元NTT社長の宮津純一郎氏、衆議院議員の愛知治郎氏、児童文学作家の安房直子氏などが挙げられます（一部一時在籍者を含む）。

創立150周年に向けて

本校は、2023年に創立150周年を迎えました。麟経堂に始まる歴史と伝統を受け継ぎつつ、都心部の学校としての特性を活かし、国際交流や地域連携を含めた多様な教育活動を展開しています。未来を担う子どもたちの育成を目指し、今後も教育実践を積み重ねていくことが期待されます。

（参考文献：公式ホームページ・沿革、仙台市史、仙台市統計一班、宮城国史）

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