仮説社

仮説社（かせつしゃ）

仮説社は、1973年に竹内三郎氏によって創設された日本の出版社であり商社です。主に、物理学者であり科学史家である板倉聖宣氏が提唱した「仮説実験授業」に関連する書籍や教材の企画・出版・販売を手掛けています。教育現場で活用できる実践的な内容から、科学、歴史、社会、文学といった幅広い分野にわたるユニークな視点の書籍や、子どもから大人まで楽しめる実験道具やおもちゃなども提供しています。仮説実験授業研究会とは連携しつつも、法人としては独自に活動を展開している組織です。

事業内容

出版事業

仮説社の出版物の中心は、板倉聖宣氏の著作や仮説実験授業に関連する書籍です。板倉氏の代表作としては、科学的な考え方を問い直す『科学的とはどういうことか』、日本の理科教育の歴史を詳細に記した『増補版日本理科教育史』、日本の脚気史を題材にした小説『模倣の時代』などがあります。また、小林眞理子氏の『煮干しの解剖教室』は、夏休みの自由研究のヒントとして広く紹介され、青少年読書感想文全国コンクールで受賞するなど高い評価を得ています。

これらの単行本に加え、テーマごとに構成された多様なシリーズも展開しています。仮説実験授業の具体的な実践例を示す〈授業書研究双書〉や〈ミニ授業書〉、科学や社会の基礎を学ぶ〈いたずら博士の科学教室〉や〈社会の科学入門シリーズ〉、子ども向けの読み物シリーズである〈やまねこ文庫〉、入門書シリーズの〈オリジナル入門シリーズ〉、人気シリーズの〈ビーカーくんとそのなかまたち〉などがあります。歴史上の科学者であるガリレオ・ガリレイや、物理学者・随筆家の寺田寅彦といった著者の作品を復刊・翻訳して世に送り出す試みも行われています。

月刊誌『たのしい授業』

1983年に創刊された月刊誌『たのしい授業』は、仮説社の活動の象徴とも言える存在です。創刊から2018年まで板倉聖宣氏が編集代表を務め、仮説実験授業の実践報告や、教育現場で役立つ様々なアイデアが掲載されています。この雑誌の大きな特徴の一つは、毎月開催される編集会議が誰でも参加できるオープンな形式であることです。これにより、読者や教育実践者との活発な交流を通じて誌面が作られています。2024年には誌面サイズや編集体制が一新されました。創刊号を「第0号」としたユニークな号数表記や、継続が危ぶまれた時期を経て発行が続けられていることなど、その歴史も特筆すべき点です。同誌に掲載された記事をまとめた『実験観察自由研究ハンドブック』や『ものづくりハンドブック』なども出版されています。

教材、実験器具、おもちゃの販売

出版事業と並行して、教材や実験器具、おもちゃの販売も仮説社の重要な事業です。日本の歴史の時代区分を一目で把握できるロングセラー商品「歴史を見るモノサシ」は、教育現場や家庭で広く活用されています。その他にも、「お家で『煮干しの解剖』体験セット」、視覚的に元素を理解できる「世界一美しい周期表したじき」、原子・分子模型、科学工作キットなど、探求心を刺激するユニークな商品を多数取り扱っています。また、岩波映像が制作した科学教育映画のDVDシリーズや、科学教育アプリといったメディア教材の販売も手掛けています。

活動拠点とイベント

仮説社は事務所と店舗を兼ねており、書籍や教材を実際に手に取って見ることができます。設立以来、西神田、高田馬場、巣鴨（2015年より）、そして2024年からは東京都中野区東中野に本社兼店舗を構えています。高田馬場および巣鴨時代には、仮説実験授業研究会の拠点である仮説会館と同じ建物に長く入居していました。店舗に併設された「やまねこラウンジ」では、教育や科学に関する定期的な講座や、ものづくり体験教室が開催されており、学びと交流の場を提供しています。また、新春や夏には「仮説社フェア」を開催し、新刊の紹介やものづくりワークショップなどを行っています。外部のイベントに出展し、体験教室などを実施することもあります。

組織と人物

仮説社は株式会社として運営されています。2024年現在の代表取締役社長は荒木三奈氏、会長は川崎浩氏です。設立者の竹内三郎氏は、国土社時代から板倉聖宣氏や仮説実験授業に関わり、仮説社の設立・発展に尽力しました。仮説社の社章や「やまねこラウンジ」といった名称に用いられる「やまねこ」は、イタリアの初期科学アカデミーであるアッカデーミア・デイ・リンチェイの紋章に由来するとされており、科学的な探求の精神を象徴しています。

まとめ

仮説社は、仮説実験授業という独自の教育理論を基盤としつつ、科学、歴史、社会といった幅広い分野における探求心を育むための出版・商品販売を通じて、教育と学びを支援しています。ユニークな企画や、誰でも参加できる編集会議、ラウンジでの活動など、単なる販売にとどまらない、教育文化の発信地としての役割も担っています。教員や教育関係者だけでなく、科学や知的好奇心を持つ多様な人々から支持されています。

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