仲根正広

仲根 正広（なかね まさひろ）氏は、1954年9月24日に東京都渋谷区で生まれ、1995年8月15日に永眠したプロ野球選手、そして解説者です。右投げ左打ち。現役の一時期には、登録名を「仲根 政裕」（読みは同じ）としていました。

高校野球界のスラッガー兼エース

日大櫻丘高校時代には、身長193cmという恵まれた体格から「ジャンボ仲根」の愛称で知られ、エースとして投手陣を牽引する傍ら、主力打者としてもチームの核を担いました。一学年下には後に歌手として大成する郷ひろみ氏がおり、同氏が野球部を見学した際に仲根氏のプレーを見て、そのレベルの高さに驚愕したという逸話も残っています。

1972年には、高校球界の檜舞台である春夏の甲子園に連続して出場。春の選抜大会では、順調に勝ち進み、準決勝では東北高校に対し九回裏に劇的な逆転勝利を収めました。決勝では、同じく日大系列の強豪である日大三高と対戦し、待井昇氏や吉沢俊幸氏らを擁する相手打線を五対〇で完封。チーム史上初の全国制覇を達成しました。なお、前年秋の東京都大会決勝でも日大三高と顔を合わせており、この時は仲根氏自身の本塁打などで勝利を収めています。夏の選手権大会においては、東京都予選準決勝で拓大一高と延長十八回の死闘を演じ、引き分け再試合となりましたが、再試合では七回コールドゲームで圧勝。決勝でも一人で投げ抜き優勝を果たし、夏の甲子園本大会では優勝候補の一角に挙げられました。しかし、本大会一回戦で強豪の高知商業高校と対戦し、延長十一回の接戦の末に惜しくも敗退となりました。

プロ入り後の苦闘と転機

高校卒業を控えた同年秋のドラフト会議で、仲根氏は近鉄バファローズから一位指名を受けます。東京出身でセントラル・リーグへの入団を希望していた仲根氏でしたが、最終的にパ・リーグの近鉄に入団。岩本尭監督の下、ルーキーながら開幕から一軍に帯同するなど、将来を期待された育成がなされました。

プロ一年目の1973年は、二十五試合に登板（一勝八敗）しました。四月二十五日のロッテ戦（川崎球場）でプロ初登板を果たし、四月三十日の阪急戦（日本生命球場）では初の先発マウンドを任されます。五月二十九日の太平洋クラブ戦（日本生命球場）では、九回一失点で完投しプロ初勝利を挙げましたが、五月六日のロッテ戦（日本生命球場）では一試合で三つのボークを記録しパ・リーグタイ記録となるなど、苦難の一年でもありました。その後は右肩の故障に悩まされ、1974年から1978年までの五年間は、一軍での登板が僅か五試合にとどまるなど、投手としては不本意な時期が続きました。1975年九月二十五日の阪急戦（西宮球場）での四安打完封勝利が、投手としての最後の白星となりました。

野手としての再起と記録

投手としての怪我に苦しむ一方、本来持ち合わせていた打撃センスを見込まれ、1979年に野手へと転向します。転向一年目からウエスタン・リーグ（二軍）で打率.291、三本塁打、三十五打点と好成績を残し、1980年には打率.336、九本塁打、三十七打点でリーグ打撃成績の三位に入るなど、野手としての才能を開花させました。1981年十月四日には、西本幸雄監督の勇退試合となった阪急戦（日本生命球場）で、今井雄太郎投手から待望のプロ初本塁打（ソロ）を放ちます。1982年六月二十四日には、阪急戦（藤井寺球場）で六番・一塁手として野手としての初先発出場を果たしました。

1983年には右翼手のレギュラーポジションを獲得。一四本塁打を記録するなど打撃で存在感を示し、シーズン終盤には五試合で打線の主軸である四番を任されるなど、野手として近鉄打線に貢献しました。八月二十日には、ロッテの仁科時成投手が九回二死までノーヒットノーランを続けていましたが、仲根氏が放った右前ヒットにより、大記録達成を阻止した場面もありました。1984年も打撃の調子は維持していましたが、リチャード・デービス選手の加入などもあり、次第に出場機会が減少しました。1985年四月二十三日の南海戦（藤井寺球場）では、プロ野球界にとって節目の記録となる通算五万号本塁打を記録しています。

移籍、引退、そして解説者へ

1988年、仲根氏は島田芳明・尾上旭両選手とのトレードで中日ドラゴンズへ移籍します。星野仙一監督からは左打者の代打のスペシャリストとして期待されましたが、結果を残すことはできず、この年限りで現役を引退しました。

プロ野球選手としてのキャリアに幕を下ろした後、仲根氏は名古屋市近郊で焼肉レストラン「牛若亭」を経営するなど飲食業に携わりました。また、宅配ピザ事業にも力を入れるなど、実業家としての手腕も発揮しました。飲食業と並行して、ラジオ大阪の「近鉄バファローズナイター」やNHK衛星放送の「メジャーリーグ中継」で野球解説者としても活動。日本球界だけでなく大リーグにも精通し、熱心な研究に基づく分かりやすい解説で、評論家としての実力が評価され始めていました。

1992年には、俳優の高倉健氏が主演した映画「ミスター・ベースボール」にも出演しています。その解説手腕が評価され始めていた矢先の1995年8月15日、肺癌のため僅か四十歳でこの世を去りました。手術後の咳払いによる傷口からの大量出血が死因とされています。

仲根氏には息子がおり、仲根圭祐氏として、お笑いコンビ「エコギャング」のメンバー「ジャンボ仲根Jr.」として活動していた元お笑い芸人です。

個人記録・登録名・背番号

プロ初登板は1973年4月25日のロッテ戦（川崎）、初先発は同年4月30日の阪急戦（日生）、プロ初勝利・初完投は同年5月29日の太平洋戦（日生）です。野手転向後、プロ初本塁打は1981年10月4日の阪急戦（日生）、野手としての初先発出場は1982年6月24日の阪急戦（藤井寺）でした。

登録名については、1973年から1981年までは「仲根 正広」、1982年から現役引退の1988年までは「仲根 政裕」を使用していました。

背番号は、近鉄時代（1973年-1987年）は「20」、中日時代（1988年）は「47」でした。

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