伊予河野氏の蜂起

伊予河野氏の蜂起

伊予河野氏の蜂起は、平安時代末期の治承4年（1180年）12月から翌年正月にかけて、伊予国（現在の愛媛県）の豪族である河野氏が平氏政権に対して起こした反乱です。この反乱は、治承・寿永の乱（源平合戦）における一局面であり、河野氏の動向は、その後の源平の戦局にも影響を与えました。

反乱の勃発

治承4年（1180年）12月、伊予国の豪族であった河野通清は、九州の菊池氏らによる反乱（鎮西反乱）に呼応し、高縄山城（現在の愛媛県松山市）で反平氏の兵を挙げました。通清は、平氏政権が伊予国に派遣していた目代を追放し、伊予国内における平氏の影響力を排除しようとしました。

河野通清の戦死

通清の挙兵に対し、平家方は備後国（現在の広島県東部）の住人である奴可入道西寂（沼賀高信）を討伐軍として伊予国へ派遣しました。通清は、翌養和元年（1181年）初め頃、高縄城で西寂の軍勢との戦いに敗れて戦死しました。通清の戦死時期については、『吉記』によれば養和元年8月とされていますが、この時期については諸説あります。

河野通信による仇討ち

通清が討たれた時、その子である通信は、母方の伯父である安芸国（現在の広島県西部）の奴田次郎のもとに身を寄せていました。父の死を知った通信は、復讐を誓い、養和元年（1181年）正月15日、備後国鞆（現在の広島県福山市）にいた西寂を急襲しました。西寂は、酒宴を開いて遊女と戯れていたところを奇襲され、生け捕りにされました。通信は、父の仇である西寂を伊予国の高縄城へ連行し、鋸で首を斬ったとも、磔にしたとも伝えられています（『平家物語』巻六「飛脚到来」）。

その後の河野氏

父の仇を討った通信は、その後もゲリラ戦を展開し、阿波国（現在の徳島県）の田口成直を伊予国喜多郡比志城（現在の大洲市）に撃破し、伊予国内における主導権を握りました。海の武士である河野氏は、その機動力を生かし、安芸国の沼田氏や豊後国（現在の大分県）の緒方惟栄・臼杵氏ら九州武士とも連携し、備前国（現在の岡山県）まで出陣して平氏への抵抗を続けました。

しかし、寿永3年（1184年）2月には、平通盛・平教経らの攻略を受け、多くの郎党を失う打撃を受けたとされています。

源氏への参陣とその後

その後、通信は元暦2年（1185年）2月の屋島の戦い、続く壇ノ浦の戦いで軍船を率いて源氏方に加わり、活躍しました。源氏の勝利に貢献した通信は、後に鎌倉幕府の御家人として取り立てられ、河野氏はその後も伊予国の有力豪族として繁栄しました。

まとめ

伊予河野氏の蜂起は、平氏政権に対する地方豪族の反乱の典型的な事例であり、その後の源平合戦の流れにも影響を与えた重要な出来事でした。河野通清の挙兵から始まり、子の通信による仇討ち、そして源氏への参陣と、その一連の流れは、当時の社会情勢や武士の生き方を如実に物語っています。

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