伊伎是雄

伊伎是雄（いき の これお）は、平安時代前期に活躍した貴族です。出自は卜部氏（うらべし）であり、後に伊伎宿禰（いきのすくね）の氏姓を賜りました。神祇官の官人であった壱伎氏成（いき の うじなり）の子とされています。彼の生涯は、卜占術の専門家としての道と、朝廷での官僚としての道の二つが重なり合って展開しました。

生い立ちと卜占術の研鑽

是雄は、壱岐国（現在の長崎県壱岐市）の石田郡出身とされています。壱岐卜部氏は、神代の時代から亀卜（きぼく）に携わってきた家柄で、その子孫たちは代々、卜部として神祇官に仕えていました。是雄もその例に漏れず、幼い頃から卜占術を学びました。特に、彼はその才能を開花させ、卜占術の奥義を極めたと言われています。その卓越した能力から、日者（卜占を行う者）の中でも「独歩」と称され、他の追随を許さない存在として知られていました。

清和天皇との関わり

嘉祥3年（850年）、是雄は皇太子であった惟仁親王（後の清和天皇）の東宮宮主（とうぐうぐうしゅ）に任ぜられました。これは、皇太子の身の回りの世話をする重要な役職であり、彼の才能と人柄が朝廷から認められた証と言えるでしょう。惟仁親王が即位して清和天皇となると、是雄は引き続き宮主（ぐうしゅ）として天皇に仕え、その信頼は厚かったと推測されます。

官僚としての活躍

清和朝において、是雄は宮主としての職務を全うする傍ら、貞観5年（863年）には外従五位下（げじゅごいのげ）に叙せられ、官僚としての地位も確立しました。同年、一族の業孝（なりたか）らと共に、長年名乗ってきた卜部から伊伎宿禰へと改姓しました。さらに、貞観11年（869年）には従五位下（じゅごいのげ）・丹波権掾（たんばごんのじょう）に叙任され、地方行政にも携わるようになりました。これらの官位の昇進からも、彼の朝廷における評価の高さが伺えます。

晩年と死

是雄は、貞観14年（872年）4月24日に54歳で亡くなりました。最終官位は、宮主従五位下兼行丹波権掾でした。彼は、卜占術の専門家として、また朝廷の官僚として、その生涯を全うしました。彼の死は、当時の人々にとって大きな損失だったと考えられます。

官歴の詳細

是雄の官歴は、『日本三代実録』に詳しく記録されています。

嘉祥3年（850年）：東宮宮主（東宮・惟仁親王）に任ぜられる。
時期不詳：正六位上に叙せられ、宮主として活動。
貞観5年（863年）正月7日：外従五位下に叙せられる。
貞観5年（863年）9月7日：卜部から伊伎宿禰に改姓。
貞観11年（869年）正月7日：従五位下（内位）に叙せられる。
貞観11年（869年）：丹波権掾を兼任。
* 貞観14年（872年）4月24日：宮主従五位下兼行丹波権掾として死去。

系譜

是雄の父は壱伎氏成、母は不詳とされています。妻は和気好道（わけ の よしみち）の娘で、男子に伊伎月雄（いき の つきお）がいました。月雄は838年から896年まで生きたとされています。

まとめ

伊伎是雄は、平安時代前期において、卜占術の専門家として卓越した才能を発揮し、同時に朝廷の官僚としても重要な役割を果たしました。その生涯は、当時の社会において、宗教と政治が密接に結びついていたことを示す好例と言えるでしょう。彼の業績は、後世にまで語り継がれるべき価値あるものです。

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