度会家行

度会家行（わたらい いえゆき）は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した伊勢神宮外宮の神官であり、伊勢神道の理論を大成した人物として知られています。康元元年（1256年）に生まれ、没年は正平6年/観応2年（1351年）とする説が有力ですが、正平17年/貞治元年（1362年）とする異説も存在します。

家行は、もともと度会有行の子として生まれ、村松を姓とし、初めは行家と名乗っていました。しかし、後に禰宜に昇格する際に家行と改名しました。徳治元年（1306年）に度会行忠が亡くなったことで禰宜の職が空席となり、家行がその後任として昇格しました。その後も順調に昇進を重ね、興国2年/暦応4年（1341年）には一禰宜にまで上り詰め、南朝から従三位の位を授けられました。正平4年/貞和5年（1349年）に職を辞任しています。

家行は、伊勢神道の外宮の神官として、内宮よりも外宮を上位とする独自の神道観を提唱しました。当時、神仏習合が一般的であった中で、神が仏よりも上位であるとする反本地垂迹説を主張し、外宮信仰の重要性を説きました。これらの主張は、従来の神道観に大きな影響を与え、後の神道思想の発展に重要な役割を果たしました。

また、家行は単なる学者や神官としてだけでなく、政治的な活動にも深く関わっていました。建武の新政が失敗に終わった後の南北朝の動乱期には、南朝方の中心人物である北畠親房を支援し、南伊勢地域における軍事活動にも積極的に参加しました。後醍醐天皇が吉野に遷幸する際には、その実現に尽力しました。家行の神国思想は、親房の思想に大きな影響を与えたとされ、親房の師とも見なされています。さらに、他の南朝勢力にも影響を与えたとされています。

家行の著作の中で、特に重要なものとして挙げられるのが『類聚神祇本源』です。この著作は、神道の根本原理を体系的にまとめたもので、後世の神道に多大な影響を与えました。その他にも、『瑚璉集』、『神道簡要』、『神祇秘抄』などの著作があり、彼の神道思想を理解する上で貴重な資料となっています。

度会家行は、伊勢神道の理論的支柱を確立し、神道思想の発展に貢献しただけでなく、政治的な混乱期には自らの信念に基づき行動した人物として、歴史に名を残しています。

参考文献
* 全国歴史教育研究協議会『日本史B用語集―A併記』（改訂版）山川出版社（原著2009年3月30日）。ISBN 9784634013025。

もう一度検索