伊号第五潜水艦

伊号第五潜水艦（いごうだいごせんすいかん）は、日本海軍の潜水艦で、伊一型潜水艦（巡潜1型）の5番艦として建造されました。巡潜1型改とも呼ばれ、日本海軍の潜水艦として初めて水上偵察機を搭載した画期的な艦でした。しかし、太平洋戦争中の1944年、サイパン沖で米軍の護衛駆逐艦に攻撃され、その生涯を終えました。

艦歴

1927年（昭和2年）の昭和2年度艦艇補充計画で建造が計画され、1929年10月30日に川崎造船所で起工しました。1931年6月19日に進水し、1932年5月31日から7月7日にかけて淡路島近海で潜航試験を実施、同年7月31日に竣工しました。竣工と同時に横須賀鎮守府籍となり、第一艦隊第1潜水戦隊第8潜水隊に編入されました。竣工時から飛行機格納筒を装備しており、水上機の運用が可能でした。

1933年6月から7月にかけて、呉海軍工廠で後部高角砲1門を撤去し、空気式の呉式1号2型射出機を1基装備しました。これにより、発艦時に艦を停止させることなく水上機の運用が可能となりました。また、この時に水中信号装置が試験的に取り付けられたとされています。

1935年8月1日から1936年11月30日まで、伊5は横須賀海軍工廠で改装工事を受けました。この際、空調装置が交換されました。1937年8月21日には、伊5は他の艦艇と共に長江河口沿岸で作戦行動を行いました。

1940年（昭和15年）には射出機を撤去し、艦橋構造物を後方に延長しました。また、96式25mm連装機銃1基を艦橋構造物上に搭載しました。この改造以降、水上機の搭載は行われなかったようです。

太平洋戦争開戦時には、第六艦隊第2潜水戦隊第8潜水隊に所属していました。1941年11月16日に横須賀を出港し、真珠湾攻撃ではモロカイ島北方海域に配備されました。1942年1月には米空母の捜索任務に従事し、その後クェゼリンを経由して横須賀に帰投しました。同年2月には、ティモール島西方沖で味方機と誤認され攻撃を受けるというアクシデントに見舞われました。応急修理後、スターリング湾到着直前に座礁事故を起こし、艦長が交代となりました。

その後、伊5はインド洋に進出し、セイロン沖海戦と連動して行動しました。1942年6月にはアリューシャン攻略作戦の支援に参加しましたが、同年8月には第2潜水戦隊が解隊され、伊5は第7潜水隊に編入されました。

ガダルカナル島の戦いでは、輸送任務や搭乗員救助任務に従事しました。1943年に入ると、ラエへの輸送作戦に頻繁に参加し、物資や人員の輸送を行いました。5月には夜間潜望鏡を破損する事故にも見舞われましたが、修理後も輸送任務を続けました。

1943年7月にはキスカ島撤退作戦に参加し、哨戒任務中に米駆逐艦の攻撃を受けますが、幸いにも回避に成功しました。1944年に入ると、サイパンへの輸送任務やラバウルへの輸送任務に従事しました。

1944年6月5日、クサイ島へ向かう予定を変更してポナペ島へ向かう途中で燃料漏れを起こし、輸送任務を中止してトラック島で修理を受けました。修理後、サイパンの戦いの勃発に伴い、マリアナ諸島東方沖合に進出しましたが、7月16日にトラックを出港したのを最後に消息不明となりました。

アメリカ側の記録によると、1944年7月18日、マリアナ沖で米護衛空母「ホガット・ベイ」のレーダーが伊5を探知。護衛駆逐艦「ワイマン」と「レイノルズ」が現場海域に向かい、潜航中の伊5をソナーで捕捉しました。「ワイマン」はヘッジホッグを複数回投下し、その結果、伊5は撃沈されました。この時、第7潜水隊司令楢原省吾大佐、艦長の土居誉重少佐以下乗員130名全員が戦死しました。沈没地点はグアム東方360km付近とされています。

伊5は1944年9月10日に除籍され、所属していた第7潜水隊も同日解隊されました。

歴代艦長

伊5には数多くの艦長が在籍しました。

艤装員長
佐藤四郎少佐：1931年12月1日 - 1932年7月31日
艦長
佐藤四郎少佐：1932年7月31日 - 1934年7月16日
貴島盛次少佐：1934年7月16日 - 1934年8月25日
佐藤四郎中佐：1934年8月25日 - 11月15日
竹崎馨少佐：1934年11月15日 - 1936年11月2日
(兼) 水口兵衛中佐：1936年11月2日 - 1936年12月1日
岩上英寿中佐：1936年12月1日 - 1937年12月1日
内野信二少佐：1937年12月1日 - 1938年12月15日
清水太郎中佐：1938年12月15日 - 1939年11月15日
西野耕三中佐：1939年11月15日 - 1940年10月19日
七字恒雄中佐：1940年10月19日 - 1942年2月5日
中村乙二中佐：1942年2月5日 - 1942年2月28日
宇都木秀次郎少佐：1942年2月28日 -
関戸好密少佐：1942年10月31日 -
森永正彦少佐：1943年4月20日 -
土居誉重少佐：1944年4月30日 -

脚注

伊号第五潜水艦は、その短い生涯の中で、様々な作戦に参加し、多くの困難を乗り越えてきました。その活躍は、日本海軍の潜水艦史において、重要な位置を占めています。

参考文献

雑誌「丸」編集部『写真日本の軍艦第12巻潜水艦』（光人社、1990年） ISBN 4-7698-0462-8
外山操『艦長たちの軍艦史』（光人社、2005年） ISBN 4-7698-1246-9
稲葉通宗『海底十一万浬』朝日ソノラマ〈航空戦史シリーズ〉、1984年。ISBN 4-257-17046-8。
海軍歴史保存会『日本海軍史』第7巻、第9巻、第10巻、第一法規出版、1995年。

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