伊東信宏

伊東 信宏（いとう のぶひろ）

日本の著名な音楽学者。1960年9月6日生まれ。現在、大阪大学大学院文学研究科にて教授を務め、教育・研究活動に従事している。彼の主要な専門分野は、中欧および東欧地域の音楽史、ならびに民族音楽学である。

経歴

出生地は京都市。学業は大阪大学で進め、1984年に同大学文学部美学科を卒業。その後、大学院に進み、1987年に修士課程を修了した。博士課程へ進学し、1991年には単位取得満期退学している。

大学院在籍中または修了後、日本学術振興会の特別研究員として研究活動を行った。さらに国際的な視野を広げるため、1992年にはハンガリーのリスト・フェレンツ音楽院に客員研究員として招聘され、現地の音楽文化研究に携わった。帰国後は教育者としてのキャリアをスタートさせ、1993年に大阪教育大学教育学部の助教授に就任。2004年からは母校である大阪大学へ戻り、文学部の助教授、2007年には文学研究科音楽学専攻の准教授を歴任した。

長年の学術的探求の成果として、2010年には「バルトークによる民俗音楽調査・研究・編曲」と題する論文により、大阪大学より博士（文学）の学位を取得している。

主な業績と受賞

伊東氏の研究は、とりわけハンガリーの作曲家であるバルトーク・ベーラや、中東欧地域の多様な音楽文化に深く切り込んだものであり、その功績は高く評価されている。

受賞歴

1998年、彼の初期の代表的な著書『バルトーク－民謡を「発見」した辺境の作曲家』（中公新書、1997年刊）は、その優れた内容が高く評価され、第7回吉田秀和賞を受賞した。同年には、同書に対してアリオン賞奨励賞（音楽評論部門）も贈られている。

さらに、中東欧の音楽が持つ複雑な歴史的・文化的背景を探求した著書『中東欧音楽の回路　ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』（岩波書店、2009年刊）は、2009年にサントリー学芸賞（思想・歴史部門）を受賞するなど、その学術的価値が広く認められている。

主要著作

専門分野に関する数多くの重要な著作を発表している。

『バルトーク－民謡を「発見」した辺境の作曲家』（中公新書、1997）
『ハイドンのエステルハージ・ソナタを読む』（春秋社、2003）
『中東欧音楽の回路　ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』（岩波書店、2009）
『バルトークの民俗音楽編曲』（大阪大学出版会、2012）
『東欧音楽綺譚　クルレンツィス・跛行の来訪神・ペトルーシュカ』（音楽之友社、2018）
『東欧音楽夜話　越えられない国境／未完の防衛線』（音楽之友社、2021）

主な翻訳

海外の重要な音楽学関連文献の翻訳も積極的に行っている。

バルトーク・ベーラ著『ハンガリー民謡』（間宮芳生と歌詩対訳、全音楽譜出版社、1995）
ヤーノシュ・カールパーティ著『バルトークの室内楽曲』（江原望共訳、法政大学出版局、1998）
『バルトーク音楽論選』（太田峰夫共訳、ちくま学芸文庫、2018）
サーシャ・バッチャーニ著『月下の犯罪　一九四五年三月、レヒニッツで起きたユダヤ人虐殺、そして或るハンガリー貴族の秘史』（講談社〈選書メチエ〉、2019）

主な編著

特定のテーマに基づく編著書も刊行している。

『ピアノはいつピアノになったか?』（大阪大学出版会、2007）
『坂本龍一 ピアノへの旅』（上尾信也と聞き手、アルテスパブリ、2024）

その他の活動

学術分野での活動に加え、メディアを通じて音楽の魅力を伝えることにも力を入れている。NHK-FM放送の番組「FMシンフォニー・コンサート」、後に「ブラヴォー!オーケストラ」では、主にNHK大阪放送局が制作する回においてパーソナリティを務め、クラシック音楽を分かりやすく解説している。

また、以下の主要な学術学会に所属し、研究の発展に貢献している。

東洋音楽学会
日本音楽学会
美学会
民族藝術学会

伊東信宏氏の研究と幅広い活動は、中東欧地域の豊かな音楽世界を日本に紹介し、音楽学の発展に多大な貢献をしている。彼の著作やメディア出演は、専門家のみならず、多くの音楽愛好家にとって重要な手引きとなっている。

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