伊藤四十二

伊藤四十二（いとう よそじ）

概要

伊藤四十二は、1909年1月9日に兵庫県神戸市で生まれ、1976年6月9日に亡くなった日本の薬学者です。臓器薬品化学と生理化学を専門とし、特に唾液腺ホルモンの研究や、世界で初めてヒト胎盤性ラクトゲンを発見したことで知られています。日本の生理化学の発展に貢献し、生物系薬学の基礎を築いた一人とされています。東京帝国大学、岐阜薬学専門学校、東京大学などで教鞭を執り、東京大学では附属図書館長と総合図書館長を兼務し、文書化や図書館の重要性を早くから認識していました。国際十進分類法の改訂にも尽力し、図書館情報学にも大きな足跡を残しました。静岡薬科大学の学長在任中に亡くなりました。

生い立ちと学歴

1909年、兵庫県神戸市で生まれた伊藤は、東京帝国大学医学部薬学科に進学し、1931年に卒業。薬学士の称号を取得しました。その後、「唾液腺ホルモンの研究」で薬学博士号を取得しています。

薬学者としてのキャリア

大学卒業後、東京帝国大学医学部の副手として採用され、臓器薬品化学教室に所属。1942年には助教授に昇任しました。太平洋戦争終結後、1948年に東京大学医学部教授となり、薬学科で講義を担当しました。薬学部設置後はそちらの教授となり、20年以上にわたり臓器薬品化学講座を主宰しました。東京大学では、薬学部長、評議員、附属図書館長、総合図書館長、総長代理などの要職を歴任。また、日本学術会議や科学技術会議、文部省の審議会など、公的な役職も兼任しました。

東京大学退職後は、静岡薬科大学の学長に就任。文部省の大学設置審議会会長も務めました。1976年にリンパ腫と肺炎で亡くなりました。

研究活動

伊藤の専門は薬学であり、特に臓器薬品化学と生理化学の研究に従事しました。日本の生理化学発展の基礎を築き、生物系薬学の確立に貢献した人物として知られています。特に唾液腺ホルモンの研究は著名で、この研究で博士号を取得しました。1958年には、その業績により日本薬学会学術賞を受賞しています。

また、1961年には世界で初めてヒト胎盤ラクトゲンを発表。この論文は、産婦人科学の古典として再録されています。

学術団体としては、日本薬学会、日本薬史学会、日本生化学会などに所属。日本薬学会では、幹事、理事、副会頭、会頭を歴任し、1973年には名誉会員の称号が贈られました。

図書館活動

1964年から1969年まで東京大学附属図書館長と総合図書館長を兼務し、ドキュメンテーションや図書館活動の重要性を早くから認識していました。国際十進分類法の改訂にも深く関わり、14年かけて615（薬学）の改訂を実現させ、日本語版、ドイツ語版、英語版の発刊に尽力しました。

国際十進分類法の問題点を議論するため、日本薬学会にドキュメンテーション委員会が設置されるとその委員長に就任。薬学分野の分類を大幅に改訂し、国際会議で採用されました。これらの功績により、図書館活動に貢献した人物として高く評価されています。

1956年には日本薬学図書館協議会の理事長に就任。日本図書館協議会、日本ドクメンテーション協会、国際ドキュメンテーション連盟でも要職を歴任しました。

人物像

伊藤は、図書館の重要性を強く認識し、大学教員が図書館の整備に関心がないことを指摘しました。「大学の目的である教育と研究を効果的に推進する基礎となるのは大学図書館である」という信念を持っていました。日本薬学図書館協議会の創設にも尽力しました。

指導法については、門下生が「部下や弟子達に向けて、およそやかましいことは一つも言われない方だった」「一人一人の持ち味を認めて最大限に勇気づけて下さるような、不思議な魅力のある先生」と評しています。また、合気道部の部長も務めていたようです。

酒を愛し、研究室の旅行などでは学生らと杯を重ねていたといわれています。

主な門下生

鶴藤丞
野口照久

略歴

1909年：兵庫県神戸市で誕生。
1931年：東京帝国大学医学部卒業。
1942年：東京帝国大学医学部助教授。
1948年：東京大学医学部教授。
1956年：日本薬学図書館協議会理事長。
1958年：東京大学薬学部教授。
1959年：総理府科学技術会議第四部会専門委員。
1959年：文部省学術奨励審議会学術情報分科審議会委員。
1964年：東京大学附属図書館長。
1964年：東京大学総合図書館長。
1964年：日本薬学会年会組織委員会委員長。
1967年：日本薬学会会頭。
1969年：静岡薬科大学学長。
1973年：日本薬学会名誉会員。
1974年：文部省大学設置審議会会長。
1976年：静岡県静岡市にて死去。

受賞歴

1958年：日本薬学会学術賞
1958年：薬事日報賞
1974年：丹羽功労賞

主な著作

『スルファミン劑』 (1948年)
『大学図書館の使命』(1966年)
『IFLAの組織とその活動――第31回、第32回総会に出席して』(1967年)

関連人物

赤須文男
緒方章
冲中重雄
菅野和夫
關屋實

関連項目

薬学
内分泌学
生化学
図書館情報学
唾液腺
ホルモン
ヒト胎盤性ラクトゲン
国際十進分類法
ドキュメンテーション

関連文献

伊藤四十二教授退官記念会編『伊藤四十二教授および協力者報文目録』東京大学薬学部伊藤四十二教授退官記念会、1969年。
金子豊編『二人の東京大学附属図書館長を顧みる』金子豊、2010年。
日本薬史学会編、奥田潤・西川隆編集代表『薬学史事典』薬事日報社、2016年。

外部リンク

伊藤 四十二 - Webcat Plus
* 日本の研究.com:666395

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