伊藤四男

伊藤四男（いとう かずお）

伊藤四男は、明治31年（1898年）11月8日に山形県新庄市で生まれ、昭和49年（1974年）3月20日に75歳で没した日本の柔道家です。講道館9段、国際武道院名人10段という位を持ち、戦後の柔道界において重要な役割を果たしました。

経歴

警察官の父から柔道の手ほどきを受け、旧制佐世保中学校で本格的に柔道を始めました。その後、海兵隊を経て講道館に入門し、三船久蔵の門下生として内弟子となり、その指導を受けました。三船の「中心帰一」「変応自在」の理念を体現すべく、日々鍛錬に励みました。

身長160.6cm、体重63.8kgという小柄な体格ながら、背負投、巴投、横捨身技、絞技、関節技を得意とし、明治神宮大会では準優勝という成績を収めました。また、大日本武徳会から柔道教士号も授与されています。

三船の門下には、佐藤金之助、白井清一、曽根幸蔵、鈴木潔治など、後に柔道界の重鎮となる人物が多く、伊藤もその一人として、三船の柔道を深く理解し、体現していました。その姿は、まるで三船の影武者のようであったと評されています。

明治大学専門部政治経済科を中退後、高等柔道教員養成所を卒業。隅落の考案者として知られる三船は、投技・固技の返し技（裏技）の形も研究しており、伊藤はそれを最も得意としていました。その成果は、著書『柔道の投げと固めの裏技』としてまとめられています。

戦後は、GHQに対して武道解禁を訴え、柔道の復興に尽力しました。その後、柔道は世界へと広がり、オリンピック競技としても採用されるなど、国際的な発展を遂げましたが、その根源には伊藤らの熱心な活動がありました。

指導者としては、自身の道場を構え、講道館の指導員や審議員としても活動しました。警視庁、日本体育大学、東洋大学など、多くの学校で師範を務め、数多くの柔道家や社会の指導者を育成しました。その功績により、講道館から9段位を授与されています。

国際交流にも力を入れ、国際武道院を主宰し、国際親善武道大会を開催するなどしました。海外での柔道指導にも積極的に取り組み、アメリカ合衆国マウントクレモン市の名誉市民号やYMCAニューヨーク総本部から柔道大使を拝命するなど、国際的な評価も高く、米国の大学から理学博士の学位を授与されています。

叙勲や名誉市民の称号も受け、晩年は柔道界の重鎮として活躍しました。「勝つばかりが能じゃない、負ける事を知らなけりゃ名人にはなれないよ」という言葉は、彼の柔道に対する深い理解と人間性を表しています。

伊藤は、「武道は実践躬行の道であり、技は身につけるもの」と語り、心身を鍛え、社会と世界の平和に貢献することを武道の目的としていました。その教えは、国際武道院に受け継がれ、現在も真の武道を追求する活動が行われています。

エピソード

三船久蔵の柔道を深く理解し、体現していたため、その姿はまるで三船の影武者のようであったと評された。
戦後の武道禁止令下において、GHQに対して武道解禁を粘り強く訴え、柔道復興に大きく貢献した。
* 国際交流に力を注ぎ、海外での柔道指導や国際親善武道大会の開催など、柔道の国際的発展に尽力した。

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