伊達邦直

伊達邦直：北海道開拓の礎を築いた仙台藩士

伊達邦直は、江戸時代末期に仙台藩一門の岩出山伊達家において10代当主を務めた人物です。明治維新という激動の時代を生き抜き、その後の人生は北海道開拓という新たな舞台へと移ります。彼の功績は、単なる開拓事業の成功にとどまらず、北海道の歴史に深く刻まれたものと言えるでしょう。

邦直は、陸奥国（後の陸前国）玉造郡岩出山城で生まれました。幼名は太刀、通称は英橘です。明治維新においては、奥羽越列藩同盟に属し官軍と戦いますが、敗戦という結果に終わります。この敗戦は、彼の人生に大きな転機をもたらしました。

敗戦後、邦直は禄高を大幅に減らされ、岩出山城も召し上げられました。家臣団も士分を剥奪され、帰農を余儀なくされます。しかし、邦直は彼らを路頭に迷わせることを憂い、私財を投じて北海道開拓への道を志します。

1869年（明治2年）、邦直は石狩国空知郡の支配を命じられます。しかし、内陸部にある空知郡では物資輸送が困難であったため、海岸近くの移転を強く希望します。この願いは当初叶いませんでしたが、家老の吾妻謙の尽力もあり、最終的には厚田郡繋富への移転が認められました。

1871年（明治4年）、邦直は岩出山から約180人の移住者を率いて北海道へと出発します。しかし、繋富の土地は砂地が多く作物が育たず、食糧難に陥ります。開拓長官東久世通禧の視察の後、新たな開拓地への移転が許可され、調査の結果、当別が最適地として選ばれました。

1872年（明治5年）、邦直は再び岩出山に戻り、新たな移住者を募ります。第2陣の182人を含め、当別での開拓は本格化しました。その後も移住者を募集し続け、1879年（明治12年）には250人を超える第3陣の移住者も迎え入れています。この年には当別で戸長が設置され、吾妻謙が就任しました。

開拓使当別詰所の設置に伴い、邦直は開拓七等属・開拓使勧業課当別在勤を命ぜられます。その後も陸軍省に所属し、陸軍屯田兵少尉に任命されるなど、北海道開拓に貢献し続けました。

1891年（明治24年）1月に邦直は亡くなりました。翌年には、旧臣らによって阿蘇神社（後の当別神社）が創建され、邦直が祀られることとなります。また同年、邦直の北海道開拓における功績を称え、孫の正人が男爵を授爵されました。さらに、1915年（大正4年）には正五位が追贈され、1940年（昭和15年）には北海道開拓神社にも合祀されています。

伊達邦直は、厳しい環境の中で北海道開拓を推進し、当別の発展に大きく貢献しました。彼の功績は、北海道の歴史に深く刻まれ、現在も人々に記憶されています。弟の伊達邦成も、亘理伊達家15代当主として有珠郡伊達村（現・伊達市）の開拓に貢献し、男爵に叙せられています。兄弟ともに北海道の開拓に重要な役割を果たしたと言えるでしょう。彼ら兄弟の功績は、北海道の歴史を語る上で欠かせないものです。

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