伊那市立図書館

伊那市立図書館は、長野県伊那市にある公共図書館です。旧伊那市域の伊那図書館と旧高遠町域の高遠町図書館の2館に加え、市内6か所の公民館図書室で構成されています。2006年に旧伊那市、高遠町、長谷村が合併して新伊那市が発足したことに伴い、現在の形となりました。

沿革

1986年: 高遠町に高遠町図書館が開館
1994年: 伊那市に伊那市立図書館が開館
* 2006年: 合併により、伊那市立伊那図書館、伊那市立高遠町図書館に改称

特色

公募館長

伊那市立図書館の大きな特徴の一つが、全国公募で選ばれた館長による運営です。2007年、長野県の公立図書館として初めて館長を公募し、法務・経営企画マネージャーの経験を持つ平賀研也氏が就任しました。平賀館長は「“伊那谷の屋根のない博物館”の“屋根のある広場”」という目標を掲げ、図書館を地域文化の発信拠点として捉え、様々な活動を展開しました。

この公募館長の取り組みは全国の図書館に影響を与え、軽井沢町立図書館、塩尻市立図書館、小布施町立図書館、佐久市立図書館、市立大町図書館でも公募館長や招聘館長が就任するきっかけとなりました。

図書館の枠を超えた活動

伊那市立図書館は、図書館の枠にとらわれないユニークな活動で知られています。2013年には、図書館の可能性を広げる活動が評価され、図書館総合展「Library of the Year」で大賞を受賞しました。この賞は、図書館の先進的な取り組みを顕彰するもので、伊那市立図書館は審査員から高い評価を得ました。

地域との連携

図書館は地域住民と協同し、知識や情報を発掘する活動にも力を入れています。特に、地域通貨「りぶら」を使ったイベント「ぶら・りぶら」は、地域住民が図書館の除籍本や古本を交換する機会を提供し、地域と図書館のつながりを深めることを目的としています。

デジタル技術の活用

伊那市立図書館は、デジタル技術を積極的に活用しています。例えば、「高遠ぶらり」というアプリは、古地図と現代地図を重ね合わせて街歩きを楽しむことができ、地域住民による能動的な情報収集と発信を支援しています。また、地域に残る古い写真をデジタル化し、ワークショップやアプリ制作に活用するなど、デジタル技術を通じて地域の歴史や文化を再発見する試みも行っています。

伊那谷自然環境ライブラリー

伊那谷の自然環境に関する専門書や資料を集めた「伊那谷自然環境ライブラリー」は、地域の自然、歴史、文化を学ぶための拠点となっています。このコーナーは、地域のエコミュージアム構想を提唱し、地域活性化に貢献しています。

高遠ブックフェスティバル

高遠では、古本屋「本の家」を中心に「高遠ブックフェスティバル」が開催されています。このイベントでは、古本市やトークイベントが開催され、町全体が本に彩られます。高遠町図書館もイベントに協力し、除籍本を提供するなどしています。

各図書館の歴史

伊那図書館

前史：上伊那図書館

伊那図書館の前身である上伊那図書館は、実業家の武井覚太郎によって設立され、1930年に開館しました。当時としては珍しい洋館で、地域の人々に親しまれてきました。戦時中には疎開先として利用されたり、進駐軍に接収された時期もありましたが、長きにわたり上伊那地域の教育・文化の中心として重要な役割を果たしました。

伊那市立図書館

1970年代から、地域文庫の活動が活発化し、1985年には「伊那図書館を考える会」が発足。その結果、1994年に公立の伊那市立図書館が開館しました。その後、合併に伴い伊那市立伊那図書館と名称が変更されました。

高遠町図書館

前史：高遠文庫、進徳館文庫

高遠町図書館は、高遠藩の藩儒である中村元恒と国学者の井岡良古によって1830年に設置された高遠文庫に起源を持ちます。その後、藩校である進徳館に文庫が設置され、多くの書籍が収集されました。進徳館文庫には、中国で印刷された貴重な文献も含まれていました。

私立図書館

1908年には、青年会や学校教員によって高遠図書館が設立。その後、伊沢修二などの尽力により、進徳図書館及美術館が開館しました。1920年には、これらの図書館が合併して高遠町立高遠進徳図書館となり、町立図書館としての歴史が始まりました。

高遠町図書館

戦後の混乱期を経て、1986年に高遠町図書館が新築され、高遠進徳図書館の蔵書を引き継ぎました。住民一人当たりの図書購入費が日本一を記録するなど、地域に根差した図書館活動を展開しています。また、古文書館を併設し、地域資料の収集・保存にも力を入れています。2002年には、信州大学に保管されていた進徳館文庫の書籍が、128年ぶりに高遠町に返還されました。

利用案内

貸出

貸出カードは、住所などの制限なく作成できます。本・雑誌は貸出冊数制限なしで2週間、視聴覚資料は最大2点で1週間借りることができます。

伊那市立図書館は、地域住民の生活に密着した、情報発信の拠点として、これからも進化を続けていくでしょう。

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