伏見型砲艦

伏見型砲艦

伏見型砲艦は、日本海軍が建造した河用砲艦の艦級であり、2隻が建造されました。

概要

伏見型砲艦は、③計画に基づいて建造された熱海型砲艦の改良型です。日本の河用砲艦として初めてタービン機関を採用し、転輪羅針儀も搭載されました。しかし、太平洋戦争終戦時に2隻とも中国軍に接収され、その生涯を終えることとなりました。

計画

熱海型砲艦の完成後も河用砲艦の増強を求める声が上がり、昭和12年度（1937年度）の第三次補充計画（通称③計画）によって建造予算が成立しました。この計画では、橋立型砲艦も同時に予算が成立しています。艦型仮称名は第十五号艦型、議会提出の説明書での艦種は砲艦乙と記載され、予算は1隻あたり1,174,500円、2隻で合計2,349,000円でした。昭和16年度には物価高騰を理由に追加予算が成立し、1隻あたり1,218,111円、2隻で合計2,436,222円となっています。計画番号はE.17。

設計にあたっては、熱海型砲艦や満州国海軍の順天型砲艦の使用実績が参考にされました。軍令部の要求要目は以下の通りです。

基準排水量: 260ロングトン (264 t)
速力: 17ノット
航続距離: 14ノットで1,400カイリ
兵装: 短8センチ高角砲1門、25ミリ機銃2挺、15センチ曲射砲

また、揚子江を遡上する際の臨時旗艦としての機能も求められました。しかし、15センチ曲射砲装備の要求は1937年5月に取り消されました。当初、機関出力は1,700馬力と予想されていましたが、艦型試験の結果、要求速力17ノットに対し2,200馬力が必要と判明し、機関重量が増加しました。速力と出力の関係から、水線長は46m程度から50mに延長されています。

艦型

艦型や一般配置は熱海型に準じたものとなりました。煙突は傾斜した1本で、マストは2檣で前後とも単檣（ポール・マスト）でした。

機関

日本海軍の河用砲艦として初めてタービン機関を採用しました。従来のレシプロ機関と比較して、タービン機関は重量が軽く、浅喫水の艦での振動が少なく、機関の調整が容易であるという利点がありました。ディーゼル機関は重量が大きく、固有の振動があり、故障時の修理が困難であるため採用されませんでした。ボイラーはホ号艦本式缶（空気余熱器付）2基を装備し、小型ながら燃焼効率を向上させていました。主機には艦本式高圧低圧2段減速タービン2基を装備し、揚子江の急流を遡上する際に推進器が空転するのを防ぐため、タービンが逆回転しないよう主蒸気管系に調速弁装置が設けられました。

兵装

砲熕兵装は軍令部の要求通り、短8センチ高角砲1門、25ミリ連装機銃1基2挺が装備されました。高角砲は艦首に、連装機銃は後部マスト後方の上構天蓋に設置され、高角砲、連装機銃共に防楯が装着されました。探照灯は艦橋トップ後方部分に探照灯台が設けられ、60cm探照灯1基が装備されました。日中戦争の戦訓に基づいて、竣工時より掃海具（パラベーン）2基が搭載されました。

防御

200mからの小銃弾防御を想定して、羅針艦橋周壁は厚さ5mm、天蓋は厚さ4mmの不感磁性鋼板とし、船体中央水線付近の外板は5mm厚のDS鋼としました。また高角砲と機銃にも厚さ6mmの楯を装着しました。

舵

旋回性能を良好にするため、舵は推進器後方に2個、船体中心線に1個の3個を装備しました。従来の河用砲艦は艦尾が直線状で、その後方に舵を装備していましたが、この形状は艦尾波が大きくて周囲の船に危害を及ぼすことがありました。そこで本型では船体平面で艦尾舷側部分を丸みの帯びた形状とし、舵は艦尾からはみ出さないように装備しました。

その他艤装

従来の河用砲艦では磁気羅針儀のみの搭載でしたが、安式一号転輪羅針儀を装備しました。舵輪を2基装備し故障に備えました。

艦型の変遷

開戦後に短8センチ高角砲は40口径8センチ高角砲に換装されました。大戦中の「宇治」には舷外電路の装備が確認されています。また25ミリ単装機銃数挺が増備されたと思われます。

同型艦

伏見（ふしみ）
隅田（すみだ）

運用

2隻は藤永田造船所で建造され、日本海軍最初の河用砲艦の艦名（「伏見」I、「隅田」I）を引き継ぎました。竣工後は中国大陸へ自力で航行し、終戦時「伏見」は安慶で擱座、「隅田」は小破していましたが、いずれも中国側に接収されました。

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