休眠

休眠 (Dormancy)とは

休眠とは、生物がその生活環において、成長、発生、または身体活動を一時的に休止する期間を指します。この間、生物は代謝を極限まで抑え、エネルギー消費を最小限に留めます。

休眠の概説

休眠は、環境条件に大きく左右されます。生物は、不利な環境の到来を予測して休眠に入る場合と、実際に不利な環境に置かれた後に休眠に入る場合があります。

予測的な休眠: 多くの植物が、日照時間の短縮や気温の低下といった兆候から冬の到来を予測し、事前に休眠に入ります。
反応的な休眠: 気候変動が激しい地域では、生物が予期せぬ環境変化に直面した後、休眠に入ることがあります。

休眠は、生物が利用可能な資源を効率的に消費し、より長く生命活動を維持することを可能にするため、不利な環境下でも生存率を高める上で重要な戦略です。

冬眠との違い

冬眠は休眠の代表的な例ですが、その定義には誤解も多く見られます。例えば、クマの冬ごもりは、体温や代謝の低下が限定的であるため、厳密には冬眠とは言えません。冬眠の例として、シマ[[リス]]の冬眠が挙げられます。シマ[[リス]]は、冬眠中に呼吸数、体温、心拍数を大幅に低下させ、エネルギー消費を抑えます。一方、クマは冬ごもりの間も体機能を大きく低下させることはなく、必要に応じて活動することもあります。

動物における休眠

冬眠 (Hibernation)

多くの動物が、冬季の低気温や食物不足を避けるために冬眠を行います。冬眠前には、体脂肪を蓄え、エネルギーを確保します。冬眠中は、心拍数や体温が著しく低下します。冬眠を行う哺乳類としては、コウモリ、ジリス、コビトキツネザルなどが知られています。また、爬虫類も冬眠に類似したブルメーションと呼ばれる休眠を行うことがあります。

発生休止 (Diapause)

発生休止は、遺伝的に決定された予測的な戦略です。昆虫によく見られ、秋から春にかけて発生を一時的に停止させる現象です。哺乳類では、アカシカが受精卵の着床を遅らせ、出産時期を調整することが知られています。

夏眠 (Aestivation)

夏眠は、高温や乾燥に対応して起こる休眠です。カタツムリ、ミミズ、昆虫などの無脊椎動物や、ハイギョなどの動物に見られます。クマの冬ごもりも夏眠の一種とされることがあります。

トーパー (Torpor)

トーパーは、休息時に体温が一時的に低下する状態です。体温が外気温近くまで低下したり、正常な体温より大幅に低下したりします。ハチドリやコウモリなどの小型動物によく見られ、体温維持のエネルギー消費を抑える効果があります。

乾燥に対する休眠

陸上や浅い水域の動物では、乾燥時に休眠するものがあります。クマムシの休眠は有名です。ミジンコやカブトエビなどは耐久卵を形成し、乾燥に耐えます。

植物における休眠

植物生理学における休眠とは、植物の成長が停止する期間を指します。種子や芽の休眠がよく知られています。植物は、環境の変化を感知し、休眠に入る時期を決定します。日長、気温、湿度、土壌の含水量などが、休眠の誘導や打破に関与する要因として知られています。

種子休眠

種子は、発[[芽]]に適した条件下でも発[[芽]]しないことがあります。これは、種皮が硬いなどの物理的な要因や、胚の発生が停止しているなどの内部的な要因によるものです。種子休眠は、アブシジン酸とジベレリンという植物ホルモンによって制御されています。

乾燥種子は、環境の変化に強く、長期間休眠状態を維持できるものもあります。古代のハスの種子が発[[芽]]した例も報告されています。

芽の休眠

植物の芽は、生育に適さない環境条件の悪化に先立ち、休眠状態に入ることがあります。温帯の木本植物では、秋の短日条件によって芽の休眠が誘導されます。休眠が誘導されると、植物の成長は抑制され、休眠芽が形成されます。芽の休眠打破には、低温への暴露が必要となる場合があります。

菌類、バクテリア、ウイルスにおける休眠

菌類は、厚壁の休眠胞子や菌核を形成して休眠します。バクテリアは、芽胞や嚢子を形成して休眠します。ウイルスは、細胞内で活動を停止し、休眠状態となることがあります（潜伏感染）。

脚注

[1] 中国で発見された約1300年前のハスの種子が発[[芽]]した例

関連項目

冬眠
恒温動物
芽胞
アブシジン酸
ジベレリン
種子の休眠

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