伝送

伝送とは

伝送（でんそう）とは、ある場所から別の場所へ情報を移動させる際に、その情報を担う信号の形式を変換して伝達する技術を指します。主に工学分野で用いられる用語であり、電気通信や情報工学において重要な役割を果たしています。例えば、音声や画像などの情報を電気信号に変換し、それを無線電波に乗せて遠隔地へ伝送するようなケースが該当します。

英語では、伝送と転送を明確に区別せず、「transmit」や「transmission」という言葉が用いられることが多いです。しかし、工学的な文脈においては、伝送と転送は異なる概念として理解する必要があります。

伝送の概要

伝送は、情報をある地点から別の地点へ移動させる際に、信号の形式を変換することを伴います。この形式変換は、情報をより効率的、あるいは長距離伝送に適した形にするために行われます。

具体例として、音声や画像などの情報を電気信号（電圧値）に変換し、その電気信号を無線電波に変換（変調）して送信するプロセスが挙げられます。受信側では、受信した電波を元の電気信号に戻す（復調）ことで、情報を復元します。

このプロセスにおいて、形式を変換せずに情報を移動させる場合は「転送」と呼びます。例えば、データをある記憶装置から別の記憶装置へコピーする行為は転送にあたります。また、電気エネルギーそのものを送る場合は「送電」と呼び、伝送や転送とは区別されます。

一般的に、転送はより広範な状況で用いられる言葉ですが、工学分野では伝送と転送を明確に区別して使用することが重要です。

各種の伝送方式

伝送には、様々な方式が存在します。以下に主な伝送方式を分類して説明します。

電気伝導体を利用した伝送

アナログ伝送：
AM（振幅変調）：信号の振幅を変化させる方式
FM（周波数変調）：信号の周波数を変化させる方式
PM（位相変調）：信号の位相を変化させる方式
SSB（抑圧搬送波単側波帯）：AMから搬送波を抑圧した方式。LSB、USB、カーン方式AMステレオに分かれる
パルス変調：
PWM（パルス幅変調）：パルスの幅を変化させる方式
PAM（パルス振幅変調）：パルスの振幅を変化させる方式
PDM（パルス密度変調）：パルスの密度を変化させる方式
PPM（パルス位置変調）：パルスの位置を変化させる方式
PCM（パルス符号変調）：パルスを符号化して伝送する方式
変調を伴わない電気的伝送：
CW（無変調連続波）：電信（モールス信号）など、信号のオンオフで情報を伝達
デジタル変調：
ASK（振幅偏移変調）：デジタル信号に応じて振幅を変化させる方式
FSK（周波数偏移変調）：デジタル信号に応じて周波数を変化させる方式
PSK（位相偏移変調）：デジタル信号に応じて位相を変化させる方式
QAM（直角位相振幅変調）：振幅と位相の両方を変化させる方式
OOK（オンオフ変調）：デジタル信号に応じて信号のオンオフを切り替える方式
MSK（最小偏移変調）：FSKの一種で、周波数変化を最小限に抑えた方式

電気伝導体を利用しない伝送

音波による伝送：空気や液体、固体を通して振動を伝えることで情報を伝送
臭いによる伝送：空気中にホルモンなどの臭い成分を放出することで情報を伝送
光による伝送：光の強弱や色などを利用して情報を伝送
視覚信号による伝送：手旗信号や発光信号など、視覚的な方法で情報を伝送

関連項目

伝送工学：伝送に関する工学的な研究分野
転送：形式を変えずに情報を移動させること
* データ転送：デジタルデータを転送すること

もう一度検索