伴野荘 (信濃国佐久郡)

伴野荘について

伴野荘（とものしょう）は、信濃国佐久郡に位置した荘園であり、現在の長野県佐久市伴野にあたります。千曲川の左岸に広がる野沢平一帯を含め、後に南佐久郡と呼ばれるようになった地域の大部分を占めていました。しかし、伴野荘は大井荘や平賀郷との境界が不明確であり、正確な荘域は把握されていません。史料に基づくと、伴野荘には伴野、野沢、臼田、海野口、大石、鷹野、小宮山、下県、桜井、三塚、大日向など、数多くの村が含まれていることが確認されています。また、同じ信濃国には伊那郡に「伴野荘」という名の荘園も存在するため、「佐久伴野荘」という表記が使われる場合もあります。

歴史

伴野荘の名前は、平安時代中期に成立した『吾妻鏡』において見ることができます。1186年、後白河法皇が源頼朝に示した文書には、伴野荘の名が登場し、この件に関連する領家には藤原基家が名を連ね、地頭には小笠原長清が任命されていました。1188年には、頼朝が長清に対し、滞納されていた年貢の納付を命じたことが記録されています。この時期、伴野荘は後白河法皇の権威の元にあったものの、次第にその支配体制は変化していきます。

承久の乱後、伴野荘の本家は後鳥羽上皇のものとなり、領家は基家の娘である陳子が引き継ぎました。さらに、彼女の娘である利子内親王がこの土地の管理権を握ることになります。地頭職は小笠原氏から伴野氏が継承したものの、弘安8年（1285年）の霜月騒動により北条氏に地頭職を奪われることとなりました。この時期、伴野荘はその支配権をめぐる権力闘争が続いていました。

霜月騒動を経て、伴野荘は他の荘園と同様に様々な氏族に影響を受けました。嘉暦4年（1329年）には、地域の諏訪大社に関する文書から、北条氏や名越氏、金沢氏、足利氏など異なる氏族がこの地域の土地主権を持つことが伺えます。特にこの時期、霜月騒動以前に一遍が伴野荘の市場にて踊念仏を行ったことが、『一遍聖絵』にて記されています。

暉子内親王が没した後の1302年、その遺領は「室町院領」として再編され、伏見上皇の支配下に置かれました。その後、元徳2年（1330年）には持明院統の花園上皇が領家職を大徳寺に寄進する一方で、地頭職は大覚寺統の後醍醐天皇によって回収され、領家職・地頭職は大徳寺のものとなる流れに変わりました。1335年10月には、伴野荘の雑掌が大徳寺に年貢注文を提出しており、当時の年間の納付額はおおよそ7,600文であったことが示されています。

南北朝時代には伴野氏が倒幕に加わり、地頭職を回復しようとしましたが、内部の混乱や悪党の蜂起等が続き、1349年に至るまで詳細な記録が残ることなく衰退していきます。小槻匡遠が大徳寺に向けて課税の田数を伝えた最後の記録が残されているこの時期、伴野荘は歴史の表舞台から消えていくことになるのです。

参考文献

• - 井原今朝男「伴野荘」『国史大辞典 10』（吉川弘文館 1989年）
• - 郷道哲章「伴野荘」『日本史大事典 5』（平凡社 1993年）
• - 井原今朝男「伴野荘」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年）
• - 『日本歴史地名大系 20 長野県の地名』（平凡社 1979年）
• - 『長野県史 通史編 第2巻 中世1』
• - 『長野県史 通史編 第3巻 中世2』

関連項目

• - 跡部の踊り念仏

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