伴野氏

伴野氏について

伴野氏は、清和源氏の支流である甲斐源氏の流れを汲む小笠原氏の庶流にあたる武家です。その歴史は鎌倉時代に遡り、小笠原長清の六男である時長が信濃国佐久郡伴野荘の地頭職を相続したことに始まります。彼らは当初、野沢郷に城館を構え、その後、勢力を拡大していきました。

鎌倉時代

伴野氏の祖である伴野時長は、小笠原氏の一門として、信濃の地で勢力を築きました。2代目の時直の時代には、一遍上人が伴野荘を訪れています。1279年には、時直が金台寺を創建しました。1203年の比企能員の変で宗家の小笠原長経が失脚すると、伴野氏が小笠原氏一門の嫡流となります。しかし、1285年の霜月騒動で3代伴野長泰をはじめとする一族の多くが、姻戚関係にあった安達泰盛に連座し没落、伴野荘も北条氏に没収されてしまいます。小笠原氏の嫡流は、六波羅評定衆小笠原長政の子・長氏に移りました。長泰の三男である伴野泰房は安達氏の旧領である三河国に逃れ、その子孫が幡豆小笠原氏の祖となりました。一方で、信濃に残った一族は、建武の新政を機に再起を図り、5代伴野長房らが足利尊氏に味方し活躍しました。

室町時代

室町時代に入ると、伴野氏は伴野荘の地頭職を巡って領家の大徳寺と争いを繰り広げました。6代目の長信は、1392年に3代将軍・足利義満の相国寺落慶供養の先陣髄兵を務めました。1463年には、貞棟が在京して奉公衆を務め、上総介の受領名を望み、室町幕府に進物を送って参上しました。先代の上総介も、永享年間に太刀や馬を献上しています。

戦国時代

文明年間（1469年-1487年）頃には、同族である大井氏と所領を巡って争いが勃発し、伴野光利の代に前山城を築いて本拠地を野沢から移しました。1491年には、伴野光信が大井政朝を生け捕りにしています。1506年には、10代将軍・足利義尹が関東管領上杉顕定に命じて、小笠原貞慶と大井行満の争いを停止させました。1521年には、伴野貞祥が叔父である僧節香徳忠を開山として貞祥寺を創建しました。1530年には、小笠原貞慶が蓮華定院を伴野氏一族や領民の宿坊として定めていますが、これは大井氏や海野氏など他の東信濃の武家も同様でした。1527年には、伴野光信が大井氏に敗れ、甲斐国の武田信虎を頼りました。

この頃、本家の前山伴野氏（伴野光信）に対して、分家の野沢伴野氏（伴野信是）が台頭しました。1484年には両家が争いましたが、1540年に前山伴野氏、1549年には野沢伴野氏がそれぞれ武田氏に臣従し、武田氏が信濃侵攻を開始すると、先方衆として活躍しました。1567年の生島足島神社起請文には、野沢伴野氏の当主である伴野信是らのものが残っています。1575年には、伴野半左衛門が玄室和尚を招いて慈恩院を中興しました。

安土桃山時代

1583年の甲州征伐で武田家が滅亡すると、伴野氏は混乱に巻き込まれます。天正壬午の乱では後北条氏に与したため、徳川氏方の依田信蕃に攻められ、前山伴野氏の当主である伴野信守が討ち死にしました。信守の子である貞長は、佐久郡相木で挙兵しましたが、小諸城主の依田康国との戦いに敗れ、白岩で戦死し、嫡流の前山伴野氏は滅亡しました。これにより、伴野氏は諸流に移り、その勢力は一時的に衰退しました。

江戸時代

江戸時代に入ると、伴野時長の六世孫である伴野貞元を祖とする庶流の伴野貞政が、武田氏の遺臣として徳川家康から旗本に取り立てられました。貞政の弟である貞秀、貞輝も旗本として別家を興しました。また、八王子千人同心の千人頭十家の内、一家となった志村貞盈の一族が伴野氏諸流を称し、江戸時代を通して旗本として仕えました。家紋は丸に一の字を使用しました。

脚注

貞祥寺 - 1521年に伴野貞祥が建立。伴野一族の節香徳忠が開山。
小笠原氏
大井氏
跡部氏
志村氏

参考文献

『長野県百科事典』 信濃毎日新聞社、1974年
『長野県姓氏歴史人物大辞典 角川日本姓氏歴史人物大辞典20』 角川書店、1996年
『長野県史 通史編 第3巻 中世2』
* 田中豊茂『信濃中世武家伝』信濃毎日新聞社 2016年

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