佐世保市歌

佐世保市歌は、日本の長崎県佐世保市によって公式に定められた市を象徴する歌である。その歴史には二つの時代があり、それぞれ異なる市歌が制定されてきた。

初代佐世保市歌（1928年制定）

最初の佐世保市歌は、1928年（昭和3年）8月29日に制定された。この歌の作詞は八波則吉が、作曲は島崎赤太郎がそれぞれ担当した。市が保管する資料によれば、歌が制定されるに至った具体的な契機や詳しい経緯については、残念ながら現在では明らかではないという。しかし、作詞者の八波則吉は自身の著書『唱歌作歌法講話』（1931年）の中で、前年に手がけた福岡県の八幡市歌との対比として、佐世保市歌について一部言及している。
この初代市歌は、制定から数年後の1932年（昭和7年）秋頃には、横田良一の歌唱によりSPレコード化もされている。タイヘイレコードによって製造されたこのレコードは、規格品番3654-Aとして流通した。

二代目佐世保市歌（1952年制定・現行）

現在、佐世保市で歌われているのは、1952年（昭和27年）4月1日付で制定された二代目の市歌である。この歌は、佐世保市の市制施行50周年を記念する事業の一環として制作された。歌詞は一般から懸賞公募され、その中から選ばれた辻井一郎による入選作が原案となった。この原案に対し、幼少期を佐世保で過ごした縁を持つ小説家の吉田絃二郎が補作を手がけ、楽曲は堀内敬三によって作曲された。
制定後、この市歌は様々な機会で活用されてきた。1965年（昭和40年）には、佐世保市「明るい町づくり」推進協議会の依頼により、テイチクによってコンパクト盤レコードが制作された。このレコード（規格品番40-35）には、三波春夫が歌う「明るい町づくり音頭」がA面に収められ、B面にはテイチク・コーラスの歌唱による佐世保市歌が収録された。
佐世保市役所は、この二代目市歌について、市制記念式典のような市の公式行事や、市内の小中学校で行われる入学式や卒業式など、記念すべき場面で歌い継がれていると説明している。さらに、2013年（平成25年）には市制施行111周年を記念する事業として、市歌の新しいCD音源が制作された。この新録音源は、現在、市内に設置された防災無線を通じて、毎日正午を告げる時報としても利用されている。

旧町歌

2006年（平成18年）1月に佐世保市に編入された旧北松浦郡の五町（宇久町、小佐々町、吉井町、江迎町、鹿町町）には、それぞれ独自の町歌が存在していた。これらの町歌は、佐世保市への合併にあたって開かれた合併協議会の中で、「地域の歌」として今後もそれぞれの地域で継承していくことが申し合わされている。

宇久町町歌
宇久町の町歌は、1965年（昭和40年）に町制施行10周年を記念して制定された。作詞は山田哲爾、作曲は叶弦大が担当。歌詞は、1967年に刊行された『宇久町郷土誌』の巻頭に掲載されている。1979年（昭和54年）には、現在の佐世保市役所宇久支所である旧町役場の新庁舎完成を記念し、東芝EMIがシングルレコードを制作。このレコード（規格品番F4R-6066）には、町歌とともに町民音頭「宇久島音頭」が収録された。

海光るまち（旧小佐々町町歌）
小佐々町の町歌「海光るまち」は、1989年（平成元年）に町民音頭「小佐々音頭」と同時に制定され、レコードも制作された。作詞は西川巌、補作は島田陽子、作曲は池田八声が担当した。佐世保市との合併後、旧小佐々町域にある旧町立の小佐々中学校、小佐々小学校、楠栖小学校の三校は、コミュニティ・スクール「海光る町学園」として一体的な運営が行われている。学園では、それぞれの学校の校歌とは別に、旧町歌である「海光るまち」を三校共通の学園歌として演奏し、歌い継いでいる。

吉井町町歌
吉井町の町歌は、1973年（昭和48年）に町民音頭「吉井音頭」とともに制定された。

江迎町町歌
江迎町の町歌は、1980年（昭和55年）に制定された。作詞は瀬川三郎、作曲は著名な作曲家である團伊玖磨が手がけている。

* 鹿町町町歌
鹿町町の町歌は、その歌詞が1961年（昭和36年）に発行された『鹿町町郷土史』の巻頭に掲載されている。作詞者としては「佐世保市 原光枝」と記されているが、作曲者は現在も明らかになっていない。なお、鹿町町に関連する楽曲としては、この町歌の他に、1997年に地域振興のために選定された「鹿町遊情」と「鹿町音頭」がある。これらの楽曲はいずれも作詞を水木れいじ、作曲を市川昭介が担当し、演歌歌手の天童よしみが歌唱している。

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