佐渡味噌

佐渡味噌（さどみそ）

佐渡味噌は、新潟県佐渡島で作られる独特の風味を持つ米味噌です。同じ新潟県内で作られる越後味噌とは異なる特徴を持っています。

概要

佐渡味噌は、米味噌の中でも赤色系辛口に分類され、長期熟成を経て作られます。大豆に対する米の配合割合は60〜80%と高めで、塩分濃度は13〜14%です。発酵によって生まれる芳醇な香りが特徴で、大豆由来の旨味、米由来の甘味と酸味が絶妙に調和し、飽きのこない味わいを生み出します。

佐渡島では古くから、味噌の原料となる大豆や米が栽培されてきました。さらに、仕込みに使う桶や樽の材木は高千村で、タガを作る竹は松ヶ崎村などで豊富に採取できました。このような地の利を生かし、佐渡味噌は明治時代に大きく発展します。日本海航路の寄港地という地の利を活かし、北海道への出荷を中心に味噌製造業が急速に成長しました。特に、山に囲まれ湿度が高く、醸造に適した環境でありながら、工場を建てる平地と舟運にも恵まれた南部の羽茂村では、20世紀中盤には佐渡郡の味噌生産量の約80%を占めるほどでした。

歴史

佐渡味噌の起源には、いくつかの伝説が残されています。佐渡国一宮である度津神社の祭神・五十猛神、または漂着した出雲族によって味噌作りが伝えられたという説があります。

しかし、佐渡で味噌の商業生産が始まったのは、佐渡金山の発見によって相川町の人口が急増した江戸時代以降のことです。元禄年間には相川に「味噌屋町」という町名が存在し、この地で味噌作りが行われていました。また、文化年間には味噌屋に税が課せられていた記録も残っています。ただし、当時の記録では味噌の搬出入に課せられる運上の記録がないため、島外への出荷は行われていなかったと考えられています。

江戸時代末期から明治時代初期にかけて、佐渡島から数万人が北海道に移住しました。彼らは故郷の味である佐渡味噌を食べるために、佐渡から味噌を取り寄せていたと言われています。また、佐渡は日本海航路の重要な寄港地であり、北海道から石炭や木材を博多へ運んだ帰りの船が、安い運賃で味噌などを北海道へ運ぶことができました。1907年頃の記録では、10貫（37.5kg）入りの味噌1樽の価格が3円だったのに対し、運賃はわずか15銭だったとされています。

材料をそのまま販売するよりも高い付加価値が得られることから、佐渡島内の味噌産業は大きく発展し、明治末期には製造業者が50社を超えました。しかし、過当競争による品質低下が起こり、津軽味噌などに対して北海道で劣勢に立たされるという問題が生じました。そこで1909年、品質向上と販路拡大を目指し、佐渡味噌協同組合が設立されました。協同組合は、不足していた大豆などの原料確保のため外地を視察したり、北海道で販売促進活動を行ったり、品質向上のための講習会を開催するなど、様々な活動を展開しました。

日本からの移住者の増加に伴い、佐渡味噌の販路は北海道だけでなく、樺太や千島列島、沿海州などにも広がっていきました。国内では、1923年の関東大震災の救援物資として用いられたことをきっかけに、関東地方への出荷が始まり、1927年には関西地方にも出荷されるようになりました。この背景には、大正時代の北海道における道産品奨励政策の影響があったとされています。生産量の拡大に伴い、原料の供給源も多様化し、1935年の時点で米は佐渡郡内および県内の越後地域から購入していましたが、大豆は朝鮮半島や満州から輸入していました。

1940年に味噌の配給統制令が施行されると、各都道府県内での自給自足が厳格化されたため、佐渡味噌の生産額は最盛期の4分の1まで減少しました。1950年に統制令が解除されると再び販路が拡大し、新潟港を経由して貨物列車で各地に出荷されるようになりました。1971年には2万トン以上が生産され、越後味噌と合わせた新潟県の味噌生産量は4万トンを超え、長野県に次ぐ全国2位となりました。1987年には、新潟県内で製造される味噌およそ35,000トンのうち、約50%が佐渡で生産されています。しかし、2009年の調査では新潟県全体の味噌生産量は11,925トンまで減少しており、全国6位となっています。

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