佐藤泰三

佐藤 泰三（さとう たいぞう）

佐藤泰三は、1924年（大正13年）4月15日に千葉県夷隅郡上野村（現在の勝浦市）で生を受けた日本の政治家、医師である。自由民主党に所属し、参議院議員を3期務めたほか、長年にわたり産婦人科医として地域医療に貢献した。

生い立ちと医師への道

佐藤氏の父は、上野村長を経て勝浦市議会議員を務めた人物だった。生まれ故郷の上野村は当時無医村であり、医療への不安や不便を抱える村民、そして村長として苦労する父の姿を目の当たりにしたことが、医師を志す原点となった。両親からは「医者になって村に診療所を開いてほしい」という強い願いを託されていた。

1948年3月、私立岩手医学専門学校（現在の岩手医科大学）を卒業。翌1949年7月には、当時、戦地からの復員者や大陸からの引揚者とその家族が集中し、医師が不足していた埼玉県川口市の川口市民病院（現在の川口市立医療センター）の産婦人科に勤務。地域からの要望に応える形で川口での医療活動を開始した。川口市民病院では産婦人科副部長や川口市医師会役員を歴任した。

1957年11月、川口市民病院を退職し、川口市内に医療法人社団泰仁会を設立して理事長に就任。同時に佐藤産婦人科病院を開業し、院長を務めた。医師としての研鑽も積み、日本大学より医学博士号を取得した。

医師会活動と医療・福祉分野への貢献

地域医療に根差した活動に加え、医師会でも重要な役職を担った。1976年4月には川口市医師会長に就任。その後、1986年には埼玉県医師会副会長、1999年には同顧問を務めた。また、日本医師会代議員、埼玉県済生会理事なども務め、医師の立場から医療制度や地域医療の発展に尽力した。

医療・福祉分野の指導者の一人として、埼玉県立がんセンターの設立・運営に参画するなど、埼玉県の医療行政にも深く関わった。また、特別養護老人ホームさざんかの郷の理事長も務め、高齢者福祉の向上にも貢献した。

政治家としての歩み

医師会活動を通じて、川口医師会病院の経営難問題に取り組んでいた際、当時の川口市長であった大野元美氏から市議会議員選挙への出馬を勧められたことが政界入りの契機となった。

1971年4月、自由民主党公認で川口市議会議員選挙に立候補し、初当選。政治家としての第一歩を踏み出した。1975年4月には埼玉県議会議員選挙に南2区（川口市選挙区）から立候補し当選。以後、連続5期務めた。県議時代には、自由民主党埼玉県連幹事長や埼玉県議会自民党県議団長といった党内の要職を歴任。1986年3月には埼玉県議会副議長、1990年6月には埼玉県議会議長を務めるなど、県政において重きをなした。

1992年7月、第16回参議院議員通常選挙に埼玉県選挙区から自由民主党公認で立候補した。この選挙では、当時の参議院議長だった土屋義彦氏が埼玉県知事選挙出馬のため辞職しており、その補欠選挙が通常選挙と同時に行われることになっていた。佐藤氏は土屋氏の後継候補として立候補し、369,523票を獲得して補欠枠の第3位で当選した。当時68歳での国政入りは、比較的遅い年齢での中央政界進出として注目を集め、「クローニンの会」（知命立志会、会長は福田康夫氏）に所属した。参議院では竹下派（後の平成研究会）に属した。

1995年7月の第17回参議院議員通常選挙では、401,053票を得て第2位で再選を果たした。その後、1996年1月には北海道開発政務次官に就任。党内でも1997年に副幹事長、1998年に政務調査会脳死生命倫理及び臓器移植調査会長、2002年に総務、政務調査会北海道開発委員長、人事局長などを務めた。1999年8月には参議院文教科学委員長に就任するなど、国政でも要職を歴任した。

2001年7月、第19回参議院議員通常選挙に77歳で立候補した。当時高齢であったため、当初は引退観測も流れたが、佐藤氏自身の3選出馬の意向は強かった。所属していた平成研究会からの支援が限定的となる可能性に加え、埼玉県連の一部幹部からも出馬への難色が出たため、党からの公認獲得が遅れる事態となった。混乱収拾のため、県連幹部の一部が辞任。一方、後継候補を模索する動きや、自民党関係者による無所属での立候補表明など、多くの曲折を経た。しかし、当時の小泉純一郎首相の高い支持率による自民党への追い風や、長年築き上げた医療関連団体からの熱心な支持を受け、公認獲得は遅れたものの立候補を決断。結果として、選挙区最多となる704,496票を獲得し、参議院選挙では初めてトップ当選を飾るという圧倒的な強さを示した。立候補表明に際しては派閥離脱を示唆したが、当選後は派閥に留まった。

国会議員として、国土審議会特別委員（首都圏整備分科会）、行政監視委員会理事、参議院懲罰委員会理事、内閣委員会委員、沖縄及び北方問題に関する特別委員会委員、憲法調査会委員などを務めた。また、神道政治連盟国会議員懇談会や、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会に所属し、靖国神社への参拝を重ねた。医師資格を持つ議員らが参加するカトレア会に所属し、日本医師連盟からの推薦も受けた。選挙活動や政治活動においては、医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護連盟、助産師会といった主要な医療関連団体から一貫して強い支援を得ていた。

政策と引退

専門分野は医療行政や福祉政策であり、産婦人科医としての経験から少子化問題にも積極的に取り組み、自身が高齢であったことから老人福祉問題にも力を入れた。また、県議会議員を長く務めた経験から、国政と県政のパイプ役を自認していた。

2004年9月には国土交通副大臣に就任し、国の重要政策にも関与した。

高齢を理由に、2007年7月の任期満了をもって政界からの引退を表明した。長年の功績に対し、同年11月には旭日重光章を受章している。

人物・エピソード

佐藤氏の家族は、孝子夫人との間に三男一女があり、孫もいた。特筆すべきは、三人の息子全員が医師の道に進み、長女は大学教授に嫁いだことである。

親族には、千葉県出身の森コンツェルン創業者森矗昶一族がおり、衆議院議員を務めた森清（元総理府総務長官）やその兄の森曉、清氏の義弟である三木武夫（元内閣総理大臣）、清氏の弟である森美秀・英介父子など、政界・実業界で活躍した人物との縁戚関係があった。また、参議院議員を務め、参議院議長も経験した長田裕二氏も、佐藤氏と同じく夷隅郡上野村の出身であり、縁戚にあたる。

趣味は囲碁であった。

1997年6月には、北海道開発政務次官就任を機に、自身の半生と政治活動、政策を綴った著書『ドクター政務次官』を上梓した。

最期

2013年1月21日、腎不全のため死去。享年88歳であった。長年にわたり、医師、そして政治家として、特に埼玉県の医療、福祉、そして県政の発展に多大な貢献をした人生であった。

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