佐野源左衛門

佐野源左衛門（生没年不詳）は、鎌倉時代中期の武士であり、諱を常世（つねよ）と称しました。「いざ鎌倉」の語源となったとされる『鉢木』の物語に登場することで知られています。

『鉢木』の物語

佐野源左衛門は、能の演目『鉢木』に登場する人物です。この物語は、鎌倉幕府の執権であった北条時頼が、康元元年（1256年）に病に倒れ、出家して西明寺入道となり、身分を隠して諸国を巡ったという『太平記』や『増鏡』の記述が元になっているとされています。

物語では、雪の降る日に旅の僧（実は変装した北条時頼）が佐野源左衛門・常世の家に宿を求めます。常世は貧しいながらも、持て成すために大切な鉢植えの梅、松、桜を薪として燃やし、暖を取らせました。そして、かつて一族が佐野庄三十余郷の領土を没収されたことを僧に語ります。常世は「今は落ちぶれてはいるものの、鎌倉に万が一の事態が起これば、必ず馳せ参じます」と、秘めたる忠誠心を僧に伝えます。

僧が立ち去った後、幕府からの招集命令が下り、常世も鎌倉へ駆けつけます。そこで常世が見たのは、入道姿の北条時頼でした。時頼は常世の忠義を褒め称え、執権として彼を召し抱えます。常世は、あの雪の日に宿を貸した僧が時頼であったことを初めて知ります。時頼は常世に対し、没収された佐野庄三十余郷を返還し、さらにあの日に燃やした薪の種類にちなんで、梅松桜の名を冠した荘を与えます。具体的には、加賀国梅田庄、越中国桜井庄、上野国松井田庄の領土に加え、小田原城までも恩賞として与えたとされています。

史跡

恩賞の一つである「桜井の荘」は、現在の富山県黒部市三日市にあたり、黒部市市民会館の敷地内には、常世の子孫によって建立された記念碑が現存しています。また、常世の屋敷跡とされる群馬県高崎市上佐野町には、常世を祀る常世神社が建立されています。

参考文献

石井進編『もののふの都鎌倉と北条氏』新人物往来社。ISBN 9784404027306。
武部健一『道路の日本史』中央公論新社〈中公新書〉、2015年5月25日。ISBN 978-4-12-102321-6。

関連項目

鎌倉街道

外部リンク

鉢の木物語 - NHK for School 小学6年 社会（更新日不明/2016年9月17日閲覧）
* 「佐野源左衛門常世について資料はあるか。」（高崎市立中央図書館） - レファレンス協同データベース

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