何宗彦

何宗彦（か そうげん、1559年 - 1624年）は、明代後期の官僚であり、字を君美、号を昆柱と称しました。彼の出自は撫州府金渓県にありますが、父の代に随州へと移り住み、そこで生涯の基盤を築きました。

1595年、何宗彦は進士に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。彼は翰林院侍読や右諭徳といった役職を歴任し、1611年には左庶子に昇進しました。その後も順調に出世を重ね、1613年には少詹事、1614年には礼部右侍郎へと転じ、礼部尚書の職務を代行するまでになりました。

官僚として、何宗彦は万暦帝の政治姿勢に対して、しばしば諫言を行いました。特に福王朱常洵が領地を要求した際には、その不正を指摘し、6つの考慮すべき点を上奏しましたが、万暦帝はこれを聞き入れませんでした。また、皇太子朱常洛の教育や、皇孫の傅役の選任、瑞王、恵王、桂王の婚礼についても度々上奏を行いました。さらに、皇太子の生母である王貴妃の墓守や領地の問題にも積極的に取り組みました。

1615年に発生した皇太子暗殺未遂事件（梃撃の案）では、何宗彦は万暦帝の皇太子に対する冷淡な態度と警備の薄さが事件を招いたと指摘しましたが、万暦帝からの返答はありませんでした。その後、礼部左侍郎に転じ、尚書の事務を代行し続けました。

1616年、隆徳殿で火災が発生すると、何宗彦は万暦帝に朝政への復帰を求めました。1617年には、皇長孫朱由校が13歳になっても傅がついていないことを憂い、再び上奏しましたが、これも聞き入れられませんでした。万暦帝は30年もの間、朝政を顧みることがなかったため、朝廷は腐敗し、官僚たちは職務を疎かにしていました。

1619年、楊鎬が後金との戦い（サルフの戦い）で大敗を喫すると、何宗彦は「三路で軍を失い、開原、鉄嶺が相次いで陥落し、瀋陽は孤立して危機にあります。陛下には朝政に臨まれて、臣らとともに軍政の大計を立てられますようお願いします」と進言しましたが、万暦帝は依然として応じませんでした。

何宗彦は6年間も尚書の事務を代行し、時事に対して臆することなく直言したため、当時の士人たちからの信頼は厚く、名声も高まりました。12月には、多くの閣臣や廷臣が彼を首輔に推しましたが、吏科給事中の張延登が署名を拒否したため、実現しませんでした。その後、何宗彦は辞職を願い出て、官を去りました。

1620年、何宗彦は礼部尚書兼東閣大学士として復帰し、1621年には北京に到着しました。その後も太子太保・文淵閣大学士、少保・武英殿大学士へと昇進を重ねました。1622年には会試の主裁を、1623年には少保・兼太子太師・吏部尚書、さらに少傅・兼太子太傅、太子太師を歴任しました。

しかし、1624年1月、何宗彦は在官のまま亡くなりました。享年66歳でした。死後、太傅の位が追贈され、諡は文毅とされました。何宗彦は、万暦帝の治世において、朝廷の腐敗を憂い、皇帝に対して数々の諫言を行った人物として、その名を歴史に刻んでいます。

彼の生涯は、『明史』巻240 列伝第128に詳しく記されています。

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