使徒継承

使徒継承とは

使徒継承（しとけいしょう、英: apostolic succession）は、キリスト教における重要な概念の一つで、イエス・キリストの直弟子である十二使徒から、教えと権威が途切れることなく連綿と受け継がれているという信念を指します。この継承の連続性を使徒継承性と呼びます。

使徒継承の概念

使徒継承は、単に教えの正統性を示すだけでなく、教会の聖職者の地位の正統性にも関わる概念です。使徒から聖職者が任命されるという形式的な条件を満たすことで、キリストから使徒に与えられた権威が後継者へと継承されていくと信じられています。この任命は「叙階」や「叙聖」と呼ばれ、按手（あんしゅ）という手を置く儀式を通じて行われます。

使徒継承教会

使徒継承教会と広く認められているのは、カトリック教会、正教会、そして東方諸教会です。これらの教会では、使徒継承はイエスの教えの核心が現代までそのまま伝えられ、保持されていることを意味します。

聖公会や一部のルーテル教会など、プロテスタントの中にも使徒継承を自認する教派がありますが、他の教派からは必ずしも認められていません。多くのプロテスタント教会は使徒継承性を主張せず、また他から認められることもありません。

歴史的背景

使徒継承の概念を明確に主張したのは、2世紀の護教家エイレナイオスでした。彼はグノーシス主義に対抗する中で、使徒たちの伝えた教えをそのまま伝えていることが教義の正統性を見分ける基準であると主張しました。この考え方は、使徒言行録やパウロ書簡などにも見られ、使徒たちからの伝承を重視する姿勢の根拠となっています。

各教派の解釈

使徒継承の解釈は、教派によって大きく異なります。

カトリック教会と正教会: 使徒からの教えと権威の連続性を重視し、叙階の秘跡を通じて継承されると信じています。
プロテスタント教会: 「使徒的」という言葉を精神的な意味でのみ解釈し、歴史的な連続性を不可欠な要素とはみなしません。むしろ、そのような連続性の必要性を否定することもあります。
聖公会: カンタベリー大主教を通じた使徒継承を主張していますが、カトリック教会からは有効性を認められていません。

エキュメニズムと使徒継承性

エキュメニズム（教会一致運動）の流れの中で、他教派の使徒継承性の確認が論点として取り上げられることがあります。各教派は、自派と異なる教義を持つ他の教会に対しても、使徒継承性を認める傾向があります。これは、単に組織としての連続性を認めるだけでなく、他の教派が教会としての一定の正統性を持つことを認めることにもつながります。

宗教改革以前から存在する教派同士の間では、その使徒継承性は争われないことが一般的です。しかし、カトリック教会と聖公会の間のように、使徒継承の有効性を巡って見解の相違がある場合もあります。

使徒継承性を主張する教会の一覧

広く使徒継承教会とみなされる主な教派:

正教会
カトリック教会
東方諸教会

使徒継承を自称するが、必ずしも他派から認められない教派:

聖公会（アングリカン・コミュニオン）
復古カトリック教会
* ルーテル教会のうちポルヴォー・コミュニオンに加盟する教会

まとめ

使徒継承は、キリスト教の教義と教会組織において重要な役割を果たしています。その解釈は教派によって異なりますが、イエス・キリストの教えが連綿と受け継がれているという信念は、多くのキリスト教徒にとって重要な意味を持っています。

もう一度検索