來生新

來生新（きすぎ しん）

プロフィール

來生新は、1947年7月22日生まれの日本の法学者です。専門は経済法と行政法で、横浜国立大学名誉教授、神奈川大学海とみなと研究所上席研究員、そして元放送大学長という多岐にわたる肩書を持っています。指導教授は丹宗暁信でした。

略歴

1970年に北海道大学法学部を卒業後、1975年には同大学院法学研究科修士課程を修了しました。同年、横浜国立大学経済学部助教授に就任し、1989年には同大学経済学部教授および大学院国際開発研究科教授に昇進しました。1997年から1998年にかけては、イギリスのケンブリッジ大学、イースト・アングリア大学、ポリテクニックに研究留学しています。1998年には横浜国立大学大学院国際開発研究科長、1999年には大学院国際社会科学研究科教授、2004年には法科大学院教授、理事、副学長を歴任しました。

2009年に横浜国立大学を定年退官した後は、放送大学教養学部教授、2011年には副学長を経て、2017年4月から2021年3月まで放送大学学長を務めました。2022年からは、神奈川大学海とみなと研究所上席研究員として活躍しています。

また、1987年から1990年まで放送大学客員教授、1988年から1997年まで東海大学法学部非常勤講師、2009年から2012年まで大東文化大学法科大学院非常勤講師を務めるなど、教育分野での貢献も大きいです。2001年からは、シップアンドオーシャン財団発行のニューズレター編集代表者、日本経済法学会常務理事、日本沿岸域学会副会長など、学会や研究機関でも重要な役割を担っています。

単位認定試験問題への対応

2015年度の放送大学の単位認定試験（日本美術史）において、出題された問題の一部が「問題箇所」と認定され、削除された上で公開された事件がありました。

経緯

問題とされたのは、導入部の5行で、「現在の政権は、日本が再び戦争をするための体制を整えつつある」といった、現政権を批判しているとも取れる内容が含まれていました。複数の教員による校正では問題視されませんでしたが、学生からの疑義申し立てを受け、大学側は問題を作成した佐藤康宏に修正を求めました。しかし、佐藤が修正を拒否したため、大学側は該当部分を削除しました。当時の学長であった岡部洋一は、この一連の対応について、大学として教員の学問の自由を尊重する一方で、試験の公平性も確保する必要があったと説明しています。

來生の解釈と批判

當時副学長であった來生は、この問題に対して、放送大学は放送法を遵守する義務があり、試験問題も放送授業と一体のものとして捉えるべきという見解を示しました。そして、放送法第4条に定められている「政治的公平性」を理由に、該当部分の削除を支持しました。

しかし、総務省放送政策課は、紙媒体は放送法の規制対象外であるとして、來生の解釈を否定しました。メディア法専門家の服部孝章も、学問の自由の観点から來生の解釈を「異常な反応だ」と批判しました。この事件は、学問の自由と放送法の解釈を巡る大きな議論を呼びました。

受賞歴

1995年：神戸賞
2021年：海洋立国推進功労者表彰
2023年：瑞宝中綬章

主な著書

『経済活動と法 : 市場における自由の確保と法規制』（放送大学教育振興会、1987年）
『論争独占禁止法 : 独禁法主要論点の批判的検討と反批判』（共著、風行社、1994年）
『競争法と消費者法の基礎理論 : 独占禁止法、知的財産権法、消費者保護法』（共著、嵯峨野書院、1996年）
今村成和ほか編『産業経済法　現代行政法学全集30巻』（分担執筆、ぎょうせい、1996年）
岩村正彦ほか編『政府と企業 岩波講座現代の法8巻』（分担執筆、岩波書店、1997年）
海洋政策研究財団編『海洋問題入門 : 海洋の総合的管理を学ぶ』（共著、丸善、2007年）
『企業・消費者・政府と法 : 消費生活と法』（共著、放送大学教育振興会、2011年）
『市民生活と裁判』（共著、放送大学教育振興会、2012年）
笹川平和財団海洋政策研究所編『沿岸域総合管理入門』（共著、東海大学出版部、2015年）

門下生

山本裕子（大東文化大学法学部教授）
植村吉輝（阪南大学経済学部教授）

外部リンク

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來生新 - J-GLOBAL
KAKEN 來生新

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