保内町

愛媛県保内町の歴史と文化

保内町（ほないちょう）は、愛媛県の南西、佐田岬半島の付け根に位置し、瀬戸内海と宇和海に面した自然豊かな町でした。2005年3月、八幡浜市との合併により、その歴史に幕を閉じましたが、この地には独自の文化と歴史が深く刻まれています。

地理と気候

保内町は、東を八幡浜市、北東を大洲市、西を伊方町に囲まれ、山間地と丘陵地が大部分を占めていました。喜木川と宮内川が町を流れ、その流域には平地が開けています。温暖な気候に恵まれ、特に南向きの斜面には、ウンシュウミカンや伊予柑の果樹園が広がっていました。

地名の由来

奈良時代から江戸時代にかけて、この地域は矢野郷や矢野庄と呼ばれていました。「矢野保の内」が「保内」の地名の由来とされています。

歴史

明治時代には、ハゼの取引や銅鉱山、海運業で栄えました。1878年には愛媛県初の銀行が設立され、1887年には四国初の紡績会社が操業を開始。1889年には、その工場で自家発電が始まり、四国で初めて電灯が灯りました。

昭和期に入り、1955年に川之石町、喜須来村、宮内村、磯津村が合併して保内町が誕生しました。八幡浜市日土地区との合併を巡る議論の末、日土地区は八幡浜市に属することになりました。

2005年、保内町は八幡浜市と対等合併し、新たな八幡浜市の一部となりました。

行政と経済

保内町の町長は、都築孝雄氏から二宮通明氏まで、多くの首長が町政を担いました。町庁舎は美術館のような外観で、現在は八幡浜市保内分庁舎として利用されています。主要産業は柑橘類の栽培ですが、食料品製造業も盛んで、製造品出荷額では旧八幡浜市を上回っていました。また、伊方原子力発電所の関係で、集合住宅が多いのも特徴です。

産業

農業では、ウンシュウミカンと伊予柑が中心で、JA西宇和の共同選果場が各地にあります。林業は専業とする人はいませんが、山々は緑豊かです。漁業はあまり盛んではありませんが、川之石湾では魚類の養殖が行われています。鉱業では、佐田岬半島の銅鉱山がありましたが、現在はその跡が残るのみです。

製造業では、紡績工場から食料品製造業へとシフトし、水産練り製品の製造も盛んです。特に西南開発は、魚肉ソーセージを全国に広めた企業として知られています。商業は、川之石に商店街があり、国道沿いにはスーパーや特産品店が立ち並んでいます。

教育

町内には、小学校、中学校がありました。しかし、過疎化の影響で学校の統廃合が進み、2017年には中学校は保内中学校のみとなりました。

交通

町内には鉄道が通っておらず、最寄りの駅はJR八幡浜駅です。道路は、国道197号と国道378号が町の中心部で交差しています。名坂トンネルの交通渋滞を緩和するため、八西トンネルが開通しました。

観光

保内町には、旧白石和太郎邸などの歴史的建造物、平家谷公園、琴平公園などの観光スポットがあります。また、平家谷そうめん流し、秋祭りなどのイベントも開催されていました。特産品としては、柑橘類や水産練り製品、和洋菓子などが知られています。

人物

前田山英五郎（大相撲元横綱）、二宮敬作（蘭学者）、富澤赤黄男（俳人）など、多くの著名人を輩出しました。また、那須善治（灘購買組合創設者）、那須金市（実業家）など、実業家も多く輩出しました。

文化遺産

旧白石和太郎洋館、内之浦公会堂、旧宇都宮壮十郎邸などの歴史的建造物が残されており、往時の面影を伝えています。特に、宇和紡績会社は四国初の紡績会社であり、四国初の電灯が灯った場所としても有名です。また、第二十九国立銀行（現伊予銀行）は、この地に設立されました。

まとめ

保内町は、豊かな自然と歴史、そして独自の文化を持つ町でした。現在は八幡浜市の一部となりましたが、その歴史と文化は、今もなお地域の人々に受け継がれています。

保内町の歴史を振り返ると、文明開化期を牽引した先人の気概、自然と共生しながら産業を築き上げてきた人々の努力、そして時代の変化に対応しながら進化してきた町の姿が見えてきます。

これらの歴史と文化を大切にしながら、未来へと繋いでいくことが、私たちに課せられた使命です。

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