信夫山治貞

信夫山治貞(しのぶやま はるさだ)



信夫山治貞は、1925年3月21日福島県伊達郡保原町、現在の伊達市に生まれた大相撲力士です。本名は本間栄(ほんま さかえ)で、彼の力士人生は困難に満ちたものでした。彼は小野川部屋に所属し、最高位は東関脇を記録しました。

来歴


信夫山は1940年5月場所にデビューしました。15歳という若さで初土俵を踏み、当初は本名と同じ四股名の本間を使用し、1944年には幕下入りを寸前で阻まれ、招集軍に加わりました。その後、彼は朝鮮半島での敗戦を経験し、ソ連の収容所に送られるも、脱走に成功してソウルまで逃げるという強靭な精神を示しました。そして、引揚船で博多港に辿り着きました。

1946年11月場所では吾妻山名義で復帰し、再び相撲界に戻りました。翌年の11月場所で十両へ昇進しましたが、その後しばらくは十両幕下を行き来する状況が続きました。それでも、大関である増位山との取組を通じて実力を磨き、1950年9月場所で入幕を果たしました。

信夫山は技能派力士としての評価を受け、1955年には小結1958年には関脇に昇進しました。しかし、昇進がなかなか叶わない理由として、小部屋での番付運が悪いとの噂もありました。彼は研究熱心であり、私生活そのものを稽古の場として活用することで知られていました。例えば、足腰を鍛えるために一本歯の高下駄を履き、つり革につかまらずに山手線を乗り回して訓練したり、左手の握力を向上させるための練習をしたりと、常に努力を惜しまない姿勢がありました。

1958年には新横綱の若乃花との対戦で初日に勝利を収め、これが彼の研究成果によるものであったことも伝えられています。仮に三場所関脇としての地位を維持したものの、古傷の腰痛が悪化し、1960年に引退を決意します。この時、椎間板ヘルニアを抱えていたため、相撲人生に終止符を打たざるを得ませんでした。

引退後は年寄・竹縄の名を継ぎ、山響を名乗りますが、当時の出羽一門の方針に従い、独立は叶わず、1965年に日本相撲協会を去りました。1977年9月2日脳出血のため東京都内の病院で亡くなり、享年52歳でした。

特色


信夫山は特にもろ差しの技を得意としており、その取り口から「あだ名」として「りゃんこの信夫」が付けられました。これは、刀を二本差しにしている武士の俗称に由来しています。また、彼の歩き方はモンロー・ウォークに似ており、その容姿はハリウッドの俳優ジョン・ウェインに似ていたことから、特に若い女性に人気がありました。彼のすり足は「土俵に砂の二本のレールの跡が残る」と言われるほどに基本的な技術に忠実で、美しいものでした。

主な成績・記録


通算成績では403勝392敗、勝率は0.507を記録しました。幕内成績は308勝322敗、勝率は0.489でした。また、65場所の現役在位期間中に43場所で幕内に在位し、9場所の三役では関脇3場所と小結6場所の実績を持っていました。殊勲賞1回、敢闘賞1回、技能賞は6回受賞し、特筆すべきは金星7個の獲得も含まれます。特に1957年の1月場所で受賞した殊勲賞は、彼の力士としての評価を高める重要な一歩となりました。

信夫山治貞の人生は、挫折と努力の連続であり、多くのファンに愛され支えられた力士の一人として、その名は今も語り継がれています。

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