もろ差し

もろ差し（もろざし）とは

相撲において「もろ差し」は、自分の左右の腕を対戦相手の脇の下に差し入れる体勢を指します。この姿勢では、両腕が相手の胴体に密着し、なおかつ相手のまわしをつかむことによって、非常に有利な立ち位置を確保できるとされています。また、この技は「二本差し」とも言われ、力士にとっては基本的かつ重要な技術の一つです。

もろ差しの特徴

もろ差しの体勢の最大の利点は、相手を制御しやすくなることです。この状態では、相手の重心を下に下げ、まるで相手を持ち上げることができるかのように、相手の動きを制限できます。このため、相手に対して優位な位置を維持しやすく、攻撃的な動きを展開することが可能になります。

しかし、もろ差しをされた相手も対策を持っており、閂（かんぬき）や小手投げ、上手投げなどの反撃の手段を使ってくるのが一般的です。対抗策を講じられるので、もろ差しの体勢は絶対的な優位ではないことも留意しなければなりません。

もろ差しの取り組み

もろ差しから相手のまわしを掴む際には、あまり深く掴まず、極力浅い位置でまわしを取るのが効果的です。時には、拝むように前まわしを取り、引きつけつつ押す形に持ち込むことを狙います。深く差してしまうと逆に閂を決められやすくなるため、注意が必要です。

また、両腕で相手の片腕を挟むように使うこともでき、これによって相手の動きを封じる目的で用いられることがあります。このような技術を駆使して、相撲の局面を有利に進める力士も多く、特に体格に恵まれた小兵力士たちがこの技を得意としています。

有名なもろ差し使い

歴史的には、もろ差しを特に得意とした力士が数多くいます。昭和の時代には、信夫山治貞や鶴ヶ嶺昭男、大雄辰實、逆鉾伸重らが名人として知られ、また若手時代の大鵬幸喜も両腕を挟む形のもろ差しの使い手として知られています。

これらの力士は、相撲界においてもろ差しを駆使して数々の戦績を残しています。

もろ差しからの攻撃

もろ差しが得意な力士たちは、そこから多彩な決め手を繰り出すことができます。特に寄り切り、吊り出し、下手投げ、掬い投げなどが主な技として挙げられ、そのいずれもが相手に対して強い圧力をかけることができる技術です。

力士にとって、もろ差しは単なる取り組みの一部ではなく、戦略的に有利な動きを生むための重要な武器となっています。相撲の技術を深く理解するうえで、もろ差しは見逃せない要素です。

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