倉慈

倉慈（そう じ）

倉 倉慈（そう じ、生没年不詳）は、中国後漢末期から三国時代の魏にかけての武将・政治家であり、字を孝仁と称しました。彼は揚州九江郡寿春県の出身です。

生涯

倉慈は、袁術が寿春を支配していた時代に郡吏としてそのキャリアをスタートさせました。建安年間（196年 - 220年）に入ると、曹操が寿春で屯田を開始した際、倉慈は綏集都尉に任命され、その才能を発揮し始めます。

黄初年間（221年 - 227年）の末期には、長安県令に昇進。彼は清廉かつ簡潔で、筋の通った統治を行い、その公正な姿勢は官僚や民衆から畏敬と敬愛を集めました。

太和年間（227年 - 233年）には、敦煌太守という重要な役職に任ぜられます。当時の敦煌は、地理的に西の果てに位置するだけでなく、長年の戦乱によって中央政府の支配が十分に及んでいない状況でした。特に、敦煌太守が20年もの間空席であったため、地元の豪族が力を持ち、独自の勢力を築き上げていました。魏の建国後、尹奉が敦煌太守として赴任しましたが、長年の旧習を打ち破ることはできませんでした。

倉慈は、このような状況下で敦煌太守に着任すると、まず豪族の勢力を抑え込むと同時に、困窮する貧民の救済に力を注ぎました。彼の施策は全て理にかなっており、公平さを重視したものでした。特に、豪族が広大な土地を所有し、貧民がわずかな土地しか持っていないという状況を改善するため、土地の再分配を断行しました。

当時の敦煌では、訴訟が頻発しており、その多くが県レベルでは解決できず、郡に持ち込まれていました。倉慈は、これらの訴訟を自ら処理し、公平な裁きを下しました。また、刑事訴訟においては、過重な判決を避け、死刑となる者を年間で一桁に抑えるよう努めました。

以前は、西域の非漢民族が朝貢や交易を希望しても、地元の豪族が中央政府に従順でなかったため、自由な通行が妨げられていました。魏が敦煌を含む西域へのルートを支配下に置き、交易が再開された後も、豪族たちは詐欺や押し買いなどの不正行為を繰り返したため、非漢民族からの恨みを買っていました。倉慈は、首都洛陽への旅行を希望する者には過書（通行証）を発行し、通行の安全を確保するために官吏や民衆を組織して護衛にあたらせました。また、郡から帰還する者に対しては、役所が平等に世話をするように指示しました。これらの政策により、民衆と非漢民族は共に倉慈を深く敬愛し、その名を讃えました。

数年後、倉慈は在官のまま亡くなりました。彼の死を悼み、民衆は彼の遺影を描いて偲び、非漢民族の中には、剣で顔を傷つけ、血で忠誠を示す者もいたほどでした。

『魏略』によると、倉慈の後任には王遷が、さらにその次には趙基が赴任しましたが、いずれも倉慈の施策を模倣しようとしたものの、彼の域には達しませんでした。趙基の後任となった皇甫隆は、敦煌にまだ導入されていなかった耬犁（耕作器具）の作り方や灌漑の方法を教え、生地を無駄なく利用する服の織り方を導入しました。そのため、皇甫隆は倉慈に次ぐ名太守として評価されるようになりました。

参考文献

『三国志』魏書16 倉慈伝

関連項目

シルクロード

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