傷だらけの男

『傷だらけの男』について

『傷だらけの男』（きずだらけのおとこ）は、1950年に製作・公開された日本の長篇劇映画で、監督はマキノ正博が務め、東日興業による初の作品です。この映画は、当時新演伎座を経営していた長谷川一夫との提携により製作されました。新興の映画会社であった東日興業は、協力を得られない状況から撮影所を持っていなかったため、配給元の東宝が所有する東宝撮影所を利用しました。

撮影が行われた時期は、東宝が製作再開を宣言していたものの、長期間続いた東宝争議の影響で、思うように撮影が進まない時期でもありました。そのため、映画内のスラムのシーンは、日本劇場の地下を利用してロケーション撮影が行われました。こうした背景が、映画の雰囲気にも影響を与えていると言えるでしょう。

この映画が公開されたのは、1950年4月9日のことで、配給元は東宝でした。公開に向けて、監督のマキノはスランプに苦しんでおり、さらにヒロポン中毒との噂もありました。編集作業を進める際にも、ヒロポンを使用しながら作業を行っていたとか。このような状況下で作られた『傷だらけの男』ですが、公開後の評価はどうであったのか、興味深いところです。

スタッフ

本作の製作は鈴木郁三が手掛け、脚本は八住利雄が担当しました。撮影は谷口政勝、照明は西川鶴三、美術を北辰雄が務め、録音は大沢光一が担当しました。加えて、音楽は鈴木静一が手がけています。

キャスト

映画には、長谷川一夫が主演の雅一役を演じ、古川緑波が徳役、ディック・ミネが辰夫役を担当しました。また、長谷川裕見子が美代役、逢初夢子がお鯉役、三谷幸子がマリ役として出演しています。さらに、森川信、深見泰三、中村福松、藤村秀夫、渡辺篤も出演しています。

映画の特徴

本作の上映時間は88分で、フィルムは白黒方式が採用されており、スタンダードサイズ（1.37:1）、モノラル録音となっています。白黒映画として、1950年代の日本映画の一端を垣間見ることができる作品です。

まとめ

『傷だらけの男』は、新しい映画会社が初めて手掛けた作品としての意義があります。撮影の工夫や、当時の監督の個人的な苦境を背景に生まれた映画は、時代を反映した重要な作品となりました。映画界に新しい風を吹き込むきっかけとなったこの作品の背景は、映画ファンにとっても興味深いものとなるでしょう。

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