西川鶴三

西川鶴三：映画照明界の巨匠

西川鶴三（にしかわ つるぞう、1910年2月19日 - 1970年2月5日）は、日本の映画照明技師です。本名、西川光夫（にしかわ みつお）。

生涯

1910年、京都府京都市に生まれた西川は、1925年にマキノ・プロダクションに入社し、照明助手としてキャリアをスタートさせます。1928年には、マキノ正博監督の『浪人街 第一話 美しき獲物』で照明技師としてデビュー。同作品は「キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・ワン」を受賞するなど、高い評価を得ました。

1929年には片岡千恵蔵プロダクションに移籍し、その後、月形プロダクション、日活京都撮影所、新興キネマなどを経て、1936年にP.C.L.映画製作所（後の東宝）に入社します。

東宝では、山本嘉次郎監督の『綴方教室』、阿部豊監督の『燃ゆる大空』、マキノ正博監督の『長谷川・ロッパの家光と彦左』など、数々の名作を手がけました。太平洋戦争中も、製作本数が減少する中で、『阿片戦争』や『加藤隼戦闘隊』などの作品に携わります。

戦後、1946年には松竹京都撮影所に移籍し照明課長に就任。1947年には東横映画に移籍し、稲垣浩監督の『こころ月の如く』などの作品を担当。1948年には、同社撮影所照明課長に就任しました。その後、東横映画を退社し、1950年に東宝に復帰。東宝撮影所の照明技師として、数多くの作品に参加しました。

東宝照明部四天王

東宝では、溝口健二監督の『武蔵野夫人』、成瀬巳喜男監督の『めし』など、日本映画史に残る名作の照明を担当。森弘充、石井長四郎、岸田九一郎と共に「東宝照明部の四天王」と称され、その中でも「東宝でもっとも速い男」として知られていました。その照明技術は、映画の表現に深みと奥行きを与え、観客を魅了しました。

1965年には、映画界への40年の貢献を記念し、日本映画製作者連盟から表彰を受けました。1970年2月5日、59歳で死去。

フィルモグラフィー

西川鶴三は、数多くの映画作品で照明を担当しました。以下に代表的な作品を挙げます。

浪人街 第一話 美しき獲物 (1928)
綴方教室 (1938)
燃ゆる大空 (1940)
長谷川・ロッパの家光と彦左 (1941)
加藤隼戦闘隊 (1944)
武蔵野夫人 (1951)
めし (1951)
次郎長三国志シリーズ (1952-1954)
宮本武蔵 完結篇 決闘巌流島 (1956)
殺人狂時代 (1967)
日本のいちばん長い日 (1967)
水戸黄門漫遊記 (1969)

評価と影響

西川鶴三は、日本の映画照明技術の発展に大きく貢献した人物として高く評価されています。その卓越した技術と才能は、多くの映画監督やスタッフから信頼され、数々の名作を支えました。彼の仕事は、後進の照明技師たちに大きな影響を与え、日本の映画界に多大な遺産を残しました。

エピソード

片岡千恵蔵が、新調の背広を着て撮影所に現れた西川に「所内の池に飛び込んだら、二着買ってやる」と言ったところ、西川は一瞬のためらいもなく池に飛び込み、洋服二着を手に入れたという逸話が残っています。

関連人物

マキノ省三
マキノ正博（マキノ雅弘）
片岡千恵蔵
森弘充
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